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3.9 テレビ番組傾向の効果

 次に加入の決定者の先有傾向の1つとしての日常的に見ているテレビ番組の選好傾向について見ていく。本調査では番組傾向として、表3.9-1の質問を調べている。

 この10個の質問の回答では、Q4b、Q4e、Q4f、Q4iが、加入に関連する2グループ(加入、非加入)間の差で有意な傾向を示している。そこでこの場合も変数が多いので、因子分析を利用して傾向の集約をはかった。その結果、全体の分散の58.9%をカバーする4つの因子を得た。各因子の意味合いを、表3.9-2に示す。
 

表3.9-1 番組傾向の質問
質問 回答選択肢
Q4a ドラマ・演劇
Q4b 映画
Q4c 音楽
Q4d バラエティ・クイズ・ショー
Q4e ワイドショー
Q4f スポーツ
Q4g ニュース・報道・解説・ニュースショー
Q4h ドキュメンタリー(社会・自然・紀行もの)
Q4i ショッピング・生活情報
Q4j 学習・教養・趣味の講座 
1.よく見る
2.どちらとも言えない
3.あまり見ない

 
表3.9-2 番組傾向の因子の定義
因子(平方和、寄与率) 因子の内容
第1因子(1.61, 16.1%)
報道・スポーツ指向
Q4g.ニュース・報道等
Q4h.ドキュメンタリー
Q4f.スポーツ
第2因子(1.57,15.7%)
バラエティ・ワイドショー指向
Q4d.バラエティ等
Q4e.ワイドショー
第3因子(1.37,13.7%)
映画・ドラマ指向
Q4b.映画3i,Q3j
Q4a.ドラマ・演劇
Q4c.音楽
第4因子(1.34,13.4%)
生活・教養指向
Q4i.ショッピング・生活情報
Q4j.学習・教養・趣味の講座

(注)平方和と寄与率はバリマックス回転後の値である。寄与率の合計は58.9%である。

第1因子は「報道・スポーツ」指向、第2因子は「バラエティ・ワイドショー」指向、第3因子は「映画・ドラマ」指向、第4因子は「生活・教養」指向である。この4因子で全体の分散の60%弱を説明している。

 それでは次にこの4個の因子がテレビメディアの選択でどの様な効果を持ちうるかを見てみる。ここで抽出した4つの因子の因子スコアがケーブルテレビの加入に関するグループでどの様な傾向を持つかを示したのが、図3.9-1である。表3.9-1ではデータとしては、「1」が「よく見る」で傾向が強く、「3」は「あまり見ない」で傾向が弱い。したがって因子スコアは絶対値が大きい負の値で傾向が強く、絶対値が大きい正の値で傾向は弱くなる。このため同図では外側に行くほど傾向が強くなり、内側に行くほど傾向は弱くなる。この見方は2.7節と同様である。

 図3.9-1は全体の分布を見ると、3グループの類似点と相違点がよく現れている。加入と検討非加入の層は、報道・スポーツと生活・教養では類似しているが、他の2軸では、加入層は映画・ドラマを指向し、それに対して検討非加入層はバラエティ・ワイドショーを指向している。これが最も顕著な差である。次に検討非加入層と未検討層の差は、未検討層が生活・教養をより強く指向していることにある。


図3.9-1 ケーブルテレビの加入と番組傾向

 次にテレビ放送メディア別の視聴傾向を図3.9-2に示す。この場合は生活・教養面では平均値に有意差はない。主な差は、映画・ドラマとバラエティ・ワイドショー、報道・スポーツで出ている。まず地上波とBS−NHKの差は、主にはBS−NHKが報道・スポーツをよく見る点にある。次にBS−WOWOWとBS−NHKの差は、BS−WOWOWがバラエティ・ワイドショーをあまり見ず、映画・ドラマをよく見ることにある。BS−WOWOWとCATVペイの差は、CATVペイがBS−WOWOWよりバラエティ・ワイドショーをよく見る点にある。次にCATVベーシックとCATVペイの差は、CATVベーシックがCATVペイほどに映画・ドラマを見ない点にある。

 この様に一応説明できる点はあるが、例えばBS−NHKの視聴者は同時に地上波も見れる状況にあるわけであり、CATVベーシックの平均値がほぼこの2つの中に分布しているので、これではBS−NHKの利用者がCATVベーシックに乗り換えるのを説明できない。本来的に番組だけですべてが説明できる訳ではないので、必ずしも不合理な問題というわけではないが、これは別の選択要因の存在を暗示している。


図3.9-2 メディア選択と視聴傾向

 次にもう一つ、番組傾向の年齢依存性を示す。図3.9-3であるが、この図では4軸すべてで平均値は有意に分離している。さらに加えて報道・スポーツと生活・教養の2軸では、若年層ほど弱く高齢層ほど番組視聴の傾向が強く、他の2軸では若年層ほど強く高齢層ほど単調に弱い。非常に顕著な番組選好のベクトルがある。これは視聴者の番組選択の幅の広さを物語るものであるが、同時に番組選好性には構造があるわけで、マーケティング上の重要な問題を提起しているものと理解できる。


図3.9-3 年齢と視聴傾向


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