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3.10 情報機器利用の影響

 次に加入の決定者の先有傾向の1つとして、日常的に利用している情報機器がケーブルテレビの選択にどの様な効果・影響を持ちうるかを見ていく。本調査では情報機器利用として、表3.10-1の質問を調べている。

 この17個の質問の回答では、巻末の単純集計表で分かるように、Q18b、Q18e、Q18f、Q18i、Q18j、Q18k、Q18l、Q18m、Q18o、Q18r、Q18s、Q18tの12個が、加入に関連する2グループ(加入、非加入)間で有意差を示している。そこでこの場合も変数が多いので、因子分析を利用して傾向の集約をはかった。その結果、全体の分散の59.2%をカバーする5つの因子を得た。各因子の意味合いを、表3.10-2に示す。
 

表3.10-1 情報機器利用の質問
情報機器 回答選択肢
Q18a デジタルカメラ
Q18b ビデオカメラ
Q18d ヘッドホン・カセット・プレーヤー
Q18e CDプレーヤー
Q18f MDプレーヤー
Q18g DVDプレーヤー
Q18h カラオケ
Q18i コンポステレオ
Q18j コピー機
Q18k ファクシミリ
Q18l 留守番電話
Q18m コードレスホン
Q18o 携帯電話
Q18q ワープロ
Q18r パソコン
Q18s パソコン通信
Q18t インターネット 
1.家にはない
2.あるが殆ど使わない
3.家で時々使う
4.家でよく使う

 
表3.10-2 情報機器利用の因子の定義
因子(平方和、寄与率) 因子の内容
第1因子(2.77,16.3%)
インターネット・PC系
Q18t インターネット 
Q18s パソコン通信
Q18r パソコン
Q18a デジタルカメラ #
第2因子(2.12,12.5%)
オーディオ系
Q18e CDプレーヤー
Q18d ヘッドホン・カセット・プレーヤー 
Q18i コンポステレオ
Q18b ビデオカメラ #
第3因子(1.98,11.7%)
電話系
Q18l 留守番電話
Q18m コードレスホン
Q18o 携帯電話
第4因子(1.70,10.0%)
事務機系
Q18j コピー機
Q18q ワープロ
Q18k ファクシミリ
Q18h カラオケ
第5因子(1.51,8.9%)
新蓄積系
Q18g DVDプレーヤー
Q18f MDプレーヤー

(注)平方和と寄与率はバリマックス回転後の値である。寄与率の合計は59.2%である。
#印は寄与の小さい変数を示す。(<0.45)

 第1因子はインターネット・PC系、第2因子はオーディオ系、第3因子は電話系、第4因子は事務機系、第5因子は新蓄積系である。この5因子で全体の分散の60%弱を説明している。

 それでは次にこの5個の因子がテレビメディアの選択でどの様な関連性を持ちうるかを見てみる。ここで抽出した4つの因子の因子スコアがケーブルテレビの加入に関するグループでどの様な傾向を持つかを示したのが、図3.10-1である。表3.10-1ではデータとしては、「1」が「家にはない」で利用はなく、「4」は「家でよく使う」で傾向が強い。したがって因子スコアは絶対値が大きい正の値で傾向が強く、絶対値が大きい負の値で傾向は弱くなる。このため同図では外側に行くほど傾向が強くなり、内側に行くほど傾向は弱くなる。この見方は3.9節とは逆である。

 図3.10-1は全体の分布を見ると、3グループの類似点と相違点がよく現れている。加入と検討非加入の層は、インターネット・PC系、電話系、事務機器系の3軸では類似しているが、他の2軸では差がある。加入層は新蓄積系が強く、それに対して検討非加入層はオーディオ系が若干大きい。新蓄積系はまだ普及度合いが低いので、少しの差が大きく現れている点があり、有意差とは見えない。したがって双方はかなり類似していると見ることが出来る。次に検討非加入層と未検討層の差はかなり大きく、未検討層のおおよその部分が検討層の内側に入っており、未検討層は情報機器利用の水準が概して低いと見ることが出来る。


図3.10-1 ケーブルテレビの加入と情報機器利用

 次にテレビ放送メディア別の情報機器利用を図3.10-2に示す。BS−WOWOWを除く4つのメディアの分布は全体としては、CATVペイ、CATVベーシック、BS−NHK、地上波の順に、外側から内側に位置しており、比較的一様な傾向である。特にこの順位が明確なのが、インターネット・PC系と電話系の軸である。この2つの情報機器利用がテレビメディアの選択を左右しうる要因となりうることを示している。

 次にBS−WOWOWであるが、これは概して外側で、CATVペイと類似した傾向であるが、事務機系と新蓄積系の2軸で大きく異なっている。この点は要注意であるが、CATVペイと類似した傾向である点は、納得のいく点である。

 この様に一応説明できる点はあり、テレビメディアの選択要因としての可能性を示している。


図3.10-2 メディア選択と情報機器利用


3.11 その他の傾向   目次へ戻る

 これまで第3章で述べて来た、ケーブルテレビへのテレビ放送メディアの移行の実態と、移行に関与する様々な傾向に加えて、さらに追加的に考慮・注意すべき傾向をこの節で説明する。

(1)ケーブルテレビのコスト感

 テレビの視聴に必要な経費の受け取り方を、「1.安いと思う」〜「5.高いと思う」までの5段階で聞いている。ここでは次の3項目が該当する。
 

Q14a.戸建て住宅のケーブルテレビ加入初期費用  2.0万円
Q14b.集合住宅のケーブルテレビ加入初期費用 3千円
Q14C.ケーブルテレビの毎月の基本利用料 3,500円

 加入初期費用は戸建て住宅か集合住宅かによって異なるので、集計に際しては戸建て住宅の居住者は戸建て住宅用初期費用の費用感、集合住宅の居住者は集合住宅用初期費用の費用感を集めて集計している。初期費用と毎月の基本料に対するコスト感を図3.11-1、図3.11-2に示す。これらの回答は、加入−非加入のグループ間で明確な有意差があり、非加入者は概して高いと受け取っている。これらのコスト感は選択要因の有力な候補である。


図3.11-1 加入初期費用の費用感(χ2:Sig. ****)


図3.11-2 基本料3.5千円/月の費用感(χ2:Sig. ***)

(2)世帯収入

 調査では世帯全員の収入を世帯収入として聞いている。加入−非加入のグループ間の比較は巻末の単純集計表にあり、危険率1%以下で有意差があるが、無回答が加入者では17%、非加入者では29%にも及ぶ。そこで無回答を除去した集計結果を図3.11-3に示す。加入世帯と非加入世帯では有意差があり、加入世帯の方が収入水準が高い。加入世帯では非加入世帯より500万円以下が約8%低く、1500万円以上が約8%多い状況にある。


図3.11-3 加入と世帯収入(χ2:Sig. *)

(3)学歴

  巻末の単純集計表では、回答者の学歴は加入者と非加入者では有意差を生じている。しかし学歴の回答では収入の場合と同様に無回答が多い。また「その他」は内容不明である。そこで無回答と「その他」を除外した集計を図2.01-4に示す。同図では加入者は高専以上の学歴者が非加入者より約10%多いが、ほぼその分だけ高卒者が少ない構造になっている。この様に加入者の方が高学歴である。


図3.11-3 加入と世帯収入(χ2:Sig. .06)


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