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4.4 家族賛否ケース

(1)因子分析の利用

 表4.2-1の変数群にさらにケーブルテレビへの加入検討時の「q12_2.前向き家族人数」、「q12_3m.消極家族人数」を加えて因子分析を行った結果を表4.4-1に示す。
 
表4.4-1 家族賛否ケースに因子と判別係数
因子(平方和、寄与率) 因子に関与する変数 因子スコア 判別係数
第1因子(2.7,7.3%)
社会教養指向
N13H,N13F,N13G,N13J FG6Q12A1
−(注3)
 
第2因子(2.7,7.3%)
映画娯楽指向
N13Q, N13P, N13E, N13D FG6Q12A2
0.529
第3因子(2.4,6.4%)
環境テレビ視聴
Q3K(-)(注2), Q3B, Q3A(-) FG6Q12A3
 
第4因子(2.3,6.3%)
走査視聴
Q3g,Q3e,Q3f,Q3h FG6Q12A4
 
第5因子(2.2,6.0%)
反アンテナ指向
N13U,N13V FG6Q12A5
 
第6因子(2.1,5.8%)
画質向上指向
N13A,Q7,N13B FG6Q12A6  
第7因子(2.1,5.6%)
家族規模
Q2, F10, Q1_1, Q12_2 FG6Q12A7
 
第8因子(2.0,5.4%)
協調(節約)視聴
Q3I, Q3L,Q3J, Q3D FG6Q12A8
-0.513
第9因子(1.9,5.2%)
割安感
Q14AB, Q14C, Q121_3M FG6Q12A9
0.764
第10因子(1.9,5.0%)
非映画娯楽指向
N13L, N13K, N13I,N13M FG6Q12AA
 

(注1)平方和と寄与率はバリマックス回転後の値である。寄与率の合計は60.2%である。
(注2)因子スコアに寄与する変数の符号が逆転する(係数が負の場合)場合、(-)でそれを示した。
(注3)社会教養指向が強まると、その因子スコア FG6Q12A1 は負で絶対値が大きくなる。この様な場合には−で示した。傾向が強まると正で絶対値が大きくなる場合には+で示している。
(注4)分析対象のサンプル数は加入未検討層は除外され、168となっている。

加入未検討層が対象外となり、新たな変数が加わったにもかかわらず、出現する因子は4.3節の分析とほぼ同様である。つまり以前の第10因子の計画視聴が消え、新たに社会教養指向から分離した非映画娯楽指向というべき因子が現れているが、他の9因子は以前の場合と同様に存在している。この様に、現れる因子は様々なケースでかなり安定しており、安定した構造を持っていることが理解される。

 次に注目するq12_2, q12_3m の変数を見ると、「q12_2.前向き家族人数」は第7因子の家族規模を構成しており、家族規模が大きい世帯では「賛成者が多い」ということを示している。「q12_3m.消極家族人数」は第9因子の割安感を構成しており、割安感が低いと消極者が多い、という相関が見える。

 そこでこれらの10因子の因子スコアを用いて、加入者vs検討非加入者の判別分析を行った結果を表4.4-1と表4.4-2に示す。表4.4-1には判別係数を示している。同表によると割安感が最も強く効き、次いで映画娯楽指向、ほぼ同じ強さで協調視聴が効いている。表4.3-3の参考ケースにおける画質向上指向は映画娯楽指向に変わっており、「q12_2.前向き家族人数」は実質的には何らの寄与もないという結果であった。
 

表4.4-2 家族賛否ケースの判別結果
分析サンプル数 加入 129,   検討 39
判別関数重心値 加入 -0,250  検討 0.828
Wirks'λ 0.827
判別式の検定 0.0000
正準相関係数 0.416
正判別率 72.6%

 この結果は家族の賛否が持ちうる判別の強さを考えると、むしろ意外な結果であった。因子分析の対象となっている変数は、加入−非加入、ないしは加入・検討−未検討の層間で有意差がある変数を使っていた。他方、加入−検討層間では有意差のない変数が大部分である。したがって加入−検討層間の分析にこれらの変数を使って分析を進めるのは妥当ではないかも知れないという判断が成り立つ。

 そこで、次には直接に幾つかの変数を利用して、因子分析を使わずに判別分析を行った。

(2)因子分析を利用しない場合
 表4.1-1にある変数群のうちで、加入−検討非加入のグループ間で有意差がある変数は、「q2.テレビ台数」、「q12_2.前向き家族数」、「q12_3m.消極家族数」、「q14ab.加入初期費用」、「q14c.基本料」である。そこでこれらの変数を用いて判別分析を行った。その結果が表4.4-3である。
 
表4.4-3 5変数による判別分析
判別係数
q2.テレビ台数  
q12_2.前向き家族数
-0.327
q12_3m.消極家族数
0.794
q14ab.加入初期費用
0.401
q14c.基本料  
分析サンプル数 加入 263,   検討 61
判別関数重心値 加入 -0.256  検討 1.103
Wirks'λ 0.778
判別式の検定 0.0000
正準相関係数 0.471
正判別率 78.4%

 同表によると、正準相関係数は0.471で、表4.3-3の【参考】ケースの0.291、表4.4-1と表4.4-2の場合の0.416のいずれの場合よりも大きい数値である。さらに正判別率も【参考】ケースの67.1%、表4.4-1と表4.4-2の場合の72.6%より高い78.4%である。この様に見てくると、この分析のケースが最も妥当である。

 より詳細に見ていくと、この場合には5変数のうちで最大の判別係数は「q12_3m.消極家族数」、次いで「q14ab.加入初期費用」、最後が「q12_2.前向き家族数」の3つが係数を持ち、他の変数の寄与は小さい。解釈としては、ケーブルテレビの加入を検討した世帯のうちで、消極家族数が少なく、加入の初期費用に関するコスト感が弱く、さらに前向き家族数が多い世帯が加入に至る、と言うことになる。したがってコスト感以外は合意形成が非常に強い効果を持っていることが分かる。

 この観点からみると、ケーブルテレビの加入は、世帯主が主導して、加入検討グループが出来上がり、未検討グループは当然非加入にはいる。次に加入検討グループが加入と検討非加入に分かれるが、この最後の決定では合意形成が決め手になるという、コンセンサス型の加入となることを示している。この点で加入は世帯加入である。これはテレビという家族がみんなで楽しむ機器で、かつ一定程度の費用が伴う機器の導入と言う点を考えれば、極めて妥当な理解である。


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