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4.5 情報機器利用を含めたケース

(1)因子分析

 4.3節の分析に対し、さらに表4.1-1にある情報機器利用についての調査データを加えて行った分析について、本節では述べる。表4.5-1に分析において採用した変数とその内容を示している。全部で48個もの変数が取り上げられ、このデータを全部備えているサンプルは全サンプルより半減し、257個のサンプルが分析では利用されている。
 

表4.5-1 情報機器利用を加えた場合の変数とその内容
変数 内容(変数の選択肢) 平均 標準偏差
[加入動機/関心](1.重視・関心〜3.無し)
N13A a.電波障害でのTV映りの悪さを解消する
2.13619
.86203
N13B b.普通には見えるが、よりきれいな画面でみる
2.01167
.81721
N13C c.衛星放送(BS)を見る
2.02335
.85664
N13D d.多くのチャンネルの色々な番組を選べる
1.58366
.80149
N13E e.ケーブルのチャンネルで映画を見る
1.76654
.82441
N13F f.ケーブルのチャンネルでニュース(国内)を見る
2.23346
.71259
N13G g.ケーブルのチャンネルでニュース(海外)を見る
2.14008
.78302
N13H h.ケーブルのチャンネルで経済ニュースをを見る
2.35019
.69170
N13I i.ケーブルのチャンネルで地域の天気予報を見る
2.01167
.82671
N13J j.ケーブルのチャンネルで地域番組を見る
2.22568
.76779
N13K k.ケーブルのチャンネルで音楽番組を見る
2.07393
.83291
N13L l.ケーブルのチャンネルでスポーツ番組を見る
1.92607
.84686
N13M m.ケーブルのチャンネルでゴルフ番組を見る
2.37743
.79645
N13P p.ケーブルの有料チャンネルで映画を見る
2.26459
.82917
N13Q q.ケーブルの有料チャンネルでWOWOWを見る
2.19066
.86073
N13U u.アンテナの更新・維持管理が不要になる
2.19455
.82508
N13V v.家の美観上で邪魔なアンテナが不要になる
2.27626
.79889
視聴傾向(1.よくする〜3.しない)
Q3A a.見たい番組があるときだけテレビをつける
1.66148
.68906
Q3B b.仕事や勉強のときに、何となくつけておく
2.44747
.77948
Q3C c.見る番組を事前に調べて決めている
1.66537
.75834
Q3D d.テレビを見る直前に見たい番組を調べる
1.84436
.82862
Q3E e.テレビをつけて見たい番組を捜す
1.98054
.84987
Q3F f.CMの間は別のチャンネルに切りかえる
2.01946
.85901
Q3G g.面白い番組が無くてチャンネルをいろいろ回す
1.81712
.86694
Q3H h.深夜0時過ぎまでテレビを見る
2.26070
.89603
Q3I i.他の人の見ている番組をおつきあいで見る
2.24125
.80778
Q3J j.つまらないと思ってもつい見てしまう
2.42802
.73665
Q3K k.見たい番組が無い場合はテレビをこまめに消す
1.94553
.81786
Q3L l.家族と一緒にテレビを見る
1.54864
.71710
家庭での情報機器利用(1.家にない〜4.よくする)
Q18B b.ビデオカメラ
1.98833
1.04389
Q18D d.ヘッドホン・カセット・プレーヤ
2.26070
1.03745
Q18E e.CDプレーヤー
2.91829
1.01797
Q18F f.MDプレーヤー
1.53307
1.05691
Q18I i.コンポステレオ
2.37354
1.21215
Q18J j.コピー機
1.40078
.85632
Q18K k.ファクシミリ
2.02724
1.20028
Q18L l.留守番電話
2.91440
1.16276
Q18M m.コードレスホン
2.92218
1.30869
Q18O o.携帯電話
2.69650
1.29350
Q18R r.パソコン
2.17899
1.30469
Q18S s.パソコン通信
1.71595
1.13582
Q18T t.インターネット
1.74708
1.16351
F10 F10年収(1.500万円未満〜5.2000万円以上)
2.13619
.99262
Q14AB ab.加入初期費用(1.安い〜5.高い)
3.37743
1.32050
Q14C c.毎月の基本利用料 3.5千円(1.安い〜5.高い)
3.84436
1.08212
Q7 問7電波障害の有無(1.見えない〜4.影響無し)
3.47082
.84786
Q1_1 問1(1)家族人数(1.1人〜8.8人以上)
3.30739
1.37602
Q2 問2テレビ台数(1.1台〜5.5台以上)
2.01946
.97007

(注)サンプル数:257(全変数のデータが揃っているサンプルのみが利用されるため、サンプル数は減少している。

 この変数を用いて因子分析を行った結果を表4.5-2に示す。12個の因子で61.5%の分散がカバーされている。分析結果の特徴点としては次の点を挙げることが出来る。

  1. 12因子のうちの9因子はすべて表4.3-2(基本ケースにおける分析結果の因子)にある。この点では表4.3-2の変数群が作る構造はかなり安定していると考えられる。
    (表4.3-2の第3因子反アンテナ指向と第8因子画質向上指向は、ここでは第4因子反アンテナ・画質向上指向に一体化している)
  2. 情報機器利用はほとんどの変数が新たな3つの因子、第3因子インターネット系利用、第6因子オーディオ系利用、第8因子事務・電話系利用に集約されている。
  3. 基本ケースの表4.3-1の何らかの変数と情報機器利用の何らかの変数 Q18* が結合して構 成する因子は第11因子以外にはなく、かつ第11因子でもQ18Bの因子負荷は小さい。基本的には、情報機器利用変数群と他の変数群は独立軸を形成している。
    (因子数を12からさらに11、10、9と減らした分析では、因子減少とともに因子の概念が変わるが、相変わらず情報機器利用とその他の変数の両方の性質を持つ因子が生まれることはなかった。その点では情報機器利用と他の変数は別次元と考えられる)
表4.5-2 情報機器利用を加えた場合の因子分析結果の因子
因子(平方和、寄与率) 因子に関与する変数と因子の内容 因子スコア
第1因子(4.1, 8.6%)
社会教養指向
N13H,N13F,N13G,N13M,N13J,N13L,N13I
経済ニュースをはじめとして内外のニュース、ゴルフ、スポーツ、地域番組等の番組を望む傾向
FG6Q18C1
−(注3)
第2因子(3.3, 6.8%)
映画娯楽指向
N13P, N13Q, N13E,N13K,N13D
ペイチャンネルでの映画やWOWOW,映画,音楽等を望む傾向
FG6Q18C2
第3因子(2.9, 6.0%)
インターネット系利用
Q18T,Q18S,Q18R
インターネットやパソコン通信、パソコン利用を行う程度を示す。
FG6Q18C3
第4因子(2.8, 5.9%)
反アンテナ・画質向上指向
N13U,N13V,N13B,N13A,N13C
メンテナンスや家の美観上でアンテナを嫌い、さらに電波障害でのテレビ映りの悪さの解消を望む傾向
FG6Q18C4
第5因子(2.5, 5.1%)
環境テレビ視聴
Q3K(-)(注2), Q3A(-),Q3B,Q3J
とにかくテレビを点け、こまめに消すことはなく、見たい番組がなくても、つまらないと感じても見る傾向
FG6Q18C5
第6因子(2.3, 4.8%)
オーディオ系利用
Q18E,Q18I,Q18F,Q18D
CDプレーヤー、コンポステレオ、MDプレーヤー、ヘッドホンステレオなどのオーディオ機器を利用する傾向
FG6Q18C6
第7因子(2.3, 4.8%)
走査視聴
Q3g,Q3e,Q3f,Q3h
チャンネルを頻繁に回したり、点けてからチャンネルを回して番組を探したり、CM時には他局を見たりする傾向
FG6Q18C7
第8因子(2.3, 4.7%)
事務・電話系利用
Q18L,Q18K,Q18M,Q18O,Q18J
ファクシミリやコピー機、留守番電話、コードレス電話、携帯電話等を利用する傾向
FG6Q18C8
第9因子(2.0, 4.1%)
割安感
Q14C,Q14AB
ケーブルテレビの加入費用や毎月の基本料に対するコスト感
FG6Q18C9
第10因子(1.9, 3.9%)
家族規模
Q2,Q1_1,F10
家族数や見ているテレビの台数、世帯収入など、家族の規模を表す
FG6Q18CA
第11因子(1.8, 3.7%)
協調視聴
Q3L,Q3I,Q18B
他者が見ている番組をつき合いで見たり、家族と一緒に見たりする傾向
FG6Q18CB
第10因子(1.5, 3.1%)
計画視聴
Q7,Q3D,Q3C
事前に見る番組を調べる計画性があり、場合によっては直前に確認するなど視聴を計画化する傾向
FG6Q18CC
+(注4)

(注1)平方和と寄与率はバリマックス回転後の値である。寄与率の合計は61.5%である。
(注2)因子スコアに寄与する変数の符号が逆転する(係数が負の場合)場合、(-)でそれを示した。
(注3)社会教養指向が強まると、その因子スコアFG6Q18C1は負で絶対値が大きくなる。この様な場合には−で示した。第10因子家族規模の様に傾向が強まると正で絶対値が大きくなる場合には+で示している。
(注4)表4.3-2の計画視聴は−でその傾向が強まる方向だが、ここでは因子負荷の係数が逆転して、+でその傾向が強まるようになっている。

(2)判別分析

 この因子分析の結果は様々な興味を喚起するが、ここでは先に進み、表4.5-2の因子の因子スコアを用いて判別分析を行った結果を表4.5-3に示す。

表4.5-3 情報機器利用を加えた場合の判別分析と判別係数
因子スコア ケース3
加入(-) VS 非加入(+)
ケース4
加入・検討(-) VS 未検討(+)
【参考2】(注1)
加入(-) VS 検討(+)
1.社会教養指向
FG6Q18C1(−)
0.470 (3)
(注2)
0.510 (3)
 
2.映画娯楽指向
FG6Q18C2(−)
0.436 (4)
0.594 (1)
 
3.インターネット系利用
FG6Q18C3(+)
     
4.反アンテナ・画質向上指向
FG6Q18C4(−)
0.258 (7)
   
5.環境テレビ視聴
FG6Q18C5(−)
0.290 (5)
0.417 (5)
 
6.オーディオ系利用
FG6Q18C6(+)
     
7.走査視聴
FG6Q18C7(−)
     
8.事務・電話系利用
FG6Q18C8(+)
-0.497 (2)
-0.539 (2)
 
9.割安感
FG6Q18C9(−)
0.662 (1)
0.506 (4)
0.823 (1)
10.家族規模
FG6Q18CA(+)
     
11.協調(節約)視聴(注3)
FG6Q18CB(−)
-0.271 (6)
 
-0.588 (2)
12.計画視聴
FG6Q18CC(+)
     

グループ 加入 非加入 加入・検討 未検討 加入 検討
分析サンプル数
129
128
166
91
129
37
判別関数重心値
-0.632
0.637
-0.480
0.875
-0.175
0.610



Wirks'λ
0.711
0.703
0.903
判別式の検定
0.0000
0.0000
0.0002
正準相関係数
0.537
0.545
0.312
正判別率
73.2%
76.7%
63.3%

(注1)【参考2】の場合、データから未検討グループを除外したために、12個の因子スコアの独立性は失われ、変数間に相関が生じる。この場合には「割安感」と「協調視聴」は-0.025の相関係数を持つ。しかしこの程度の相関は判別係数の順位に影響していない。
(注2)( )番号は判別係数の絶対値の大きさの順位を表す。
(注3)因子11の判別への寄与は、協調視聴というより節約視聴というべき概念から生まれている。詳しくは表4.3-3の因子9の(注3)と関連する本文を参照せよ。

 表4.5-3の判別分析は、表4.3-3の情報機器利用を含めない場合と比較すると、次の点が特徴的である。

  1. 判別の結果については、双方の場合にほぼ同様な傾向にあるが、ケース3「加入−非加入」、ケース4「加入・検討−未検討」はそれぞれ若干正準相関係数、正判別率が向上し、【参考2】「加入−検討」では若干低下している。
  2. 判別に寄与する係数の傾向は、相対的な大小関係も含めて、双方の場合にはほぼ同じである。異なる点は、ケース3「加入−非加入」、ケース4「加入・検討−未検討」の場合に、機器利用のうちで事務・電話系利用(第8因子)が相当の判別係数を持つようになっている点である。
    従って全体の構造からすれば、従来の判別の構造に加え、新たな情報機器利用のうちで特に事務・電話利用が判別に寄与する軸として加わってきたものである。この項は完全に機器だけの項として加わっている。
  3. 表4.3-3の場合と同様に、少ない係数で合理的に判別されているのは、「加入・検討−未検討」(ケース4)の場合である。

 次に各ケースの傾向は次のようになる。

a.ケース3 加入vs非加入

 判別分析によると、加入者は次のような傾向がある。加入しやすい属性のうちで先有傾向としては、環境テレビ視聴が強く、かつ節約視聴が弱い層、さらにコピーやファクシミリなどの事務的な機器やコードレスや留守電、携帯電話などを多く利用する層が該当する。それらの人々のうちでさらに社会教養番組、ないしは映画娯楽番組を希望し、またそれらの人々のうちでも特にコスト感が弱い層が加入者となる。

 加入および非加入の各グループ毎の因子スコアの平均値を図4.5-1に示す。同図によると、のテレビアンテナから解放され、または画質向上を期待する人々が潜在的な加入者である。平均値に有意差がある6つの軸と有意差に近い差を持つ第4因子の反アンテナ・画質向上指向が判別式において係数を持っている。これらがグループ差をもたらす主な軸である。12個の因子スコアは相互に独立であり、かつ規格化されているので、平均値の差は判別係数に比例することとなる。図4.5-1は実際にその様な傾向を表している。


図4.5-1 情報機器利用を加えた加入と非加入グループの因子スコア平均値
(注)グラフの軸は外側ほどに軸の傾向が強まる様に書いている。従ってインターネット系、オーディオ系、事務・電話系、計画視聴の4軸については、平均値の符号を反転してグラフを書いている。

b.ケース4 加入・検討vs未検討

 判別分析によると、ケーブルテレビに加入し、また加入を検討したことがある層は、比較的大きい係数を持つ5つの軸で判別される。先有傾向としては、事務機器や電話機を利用し、かつ環境テレビ視聴の傾向が強いことで、これらの属性を持つ層が社会教養番組や映画娯楽指向番組を希望し、さらにコスト感が弱い層がケーブルテレビの加入を考える層となる。

 加入・検討および未検討の各グループごとの因子スコアの平均値を図4.5-2に示す。同図からも判別係数の持つ傾向がよく理解される。つまり因子スコアの平均値に有意差がある5本の軸が、平均値の差に比例する判別係数を持つに至っていることがよく理解される。


図4.5-2 情報機器利用を加えた加入・検討と未検討グループの因子スコア平均値
(注)グラフの軸は外側ほど軸の傾向が強いことを示している。因子スコアの正負については、その様な結果になるように符号を調整している。

c.【参考2】ケース 加入・検討vs未検討

 補足的に【参考2】のケースについても、判別分析の結果を述べる。正準相関係数は小さく、正判別率は低いが、たった2個の因子が判別係数を持っている。それによると加入者は割安感が強く、かつ節約視聴の傾向が弱い層で、逆に検討非加入層は割安感弱く(コスト意識が強く)、かつ節約視聴が強い。この2つが加入か検討かを分けていることになる。因子スコアの平均値を図4.5-3に示す。この図も判別分析の結果によく対応している。


図4.5-3 情報機器利用を加えた加入と検討非加入グループの因子スコア平均値
(注)グラフの軸は外側ほど軸の傾向が強いことを示している。このため第3因子インターネット系、第6因子オーディオ系、第7因子事務・電話系、第12因子計画視聴の符号を反転してグラフを書いている。


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