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第3章 ケーブルテレビの加入に係わる諸傾向の調査

3.1 調査の概要   目次へ戻る

(1)調査項目

 ケーブルテレビへの移行と加入要因を調べるための調査項目を図3.1-1に示す。調査は加入世帯と非加入世帯の世帯主に対して行われた。結果的には世帯主の加入決定への関与は非常に大きいものであったので、妥当な選択であった。

 従来の報告にない調査項目での特徴点としては、デモグラヒックな項目以外に、

  1. 加入決定過程における家族合意
  2. 決定判断への他者からのコミュニケーション効果
  3. 加入前のアンテナ状況
  4. 住宅形態
  5. 情報機器利用

を挙げることが出来る。これらの項目が加入世帯と非加入世帯で調査され、統計的な処理過程で加入決定要因としてどの様な役割を果たすか、が検討されることになる。

 またケーブルテレビの視聴チャンネル数や加入の満足度を調べる調査項目も加えている。これらは利用満足の構造を明らかにするためのデータとなる。


図3.1-1 調査票の調査項目

(2)研究の方法

 研究の対象地域としては、首都圏の標準的なケーブルテレビ地域として、茅ヶ崎市を選んだ。地域の概要を表3.1-1 に示す。この地域では平成8年4月からテレビちがさきがサービスを行ってきているが、平成11年1月から隣接地域の寒川町の寒川ケーブルテレビを吸収合併し、ジェイコム湘南の名称となった。なおテレビちがさきの開業は第T期が平成8年4月、第U期が平成9年秋である。そこで調査対象地域としては開業経験の長い第T期のエリアを選んだ。対象エリアは海岸の平坦地で、古くは別荘地であったが、それを起点として住宅地が発展した。テレビ電波は東京から受信と言うより、湘南平のUHF再送信がほとんどで、電波状況は概して良好である。
 

表3.1-1 ケーブルテレビ局ジェイコム湘南の概要(調査時点)
1.事業
・対象エリア  茅ヶ崎市全域、寒川町
・営業年数 2.5年
・加入率約 12.7%(調査地域の加入率)
2.サービス 
・チャンネル  映像42CH、音声6CH
・費用 基本料:3千円/月
  初期費用:2万円(戸建て住宅)、3千円(集合住宅)
3.都市環境
・従来からの別荘地の延長としての住宅地と新興住宅地も含む。
・海岸に近い平坦地で、地上波電波は湘南平からのUHF再送信で難視は少い。

 なお費用面での特徴としては、加入の初期費用が他地域に比べて低く押さえられていることである。初期費用は基本的には接続工事費で、戸建て住宅では2万円、集合住宅では3千円となっている。

 次に同ケーブルテレビ局の放送番組を表3.1-2に示す。4つのペイチャンネルを含めて、42チャンネルのテレビ放送が行われ、さらに6局のFM放送の再送信が行われている。
 

表3.1-2 ジェイコム湘南のチャンネル構成
チャンネル名 内容
1 NHK総合 再送信(注1)
2 J-COMチャンネル お知らせ・番組案内
3 NHK教育 再送信
4 日本テレビ 再送信
5 テレビ神奈川 再送信
6 TBS 再送信
8 フジテレビ 再送信
9 MXテレビ 再送信。東京ローカルニュース
10 テレビ朝日 再送信
11 放送大学  再送信 
12 テレビ東京 再送信
17 NHK衛星第一 再送信。海外ニュース・スポーツ
18 NHK衛星第二 再送信。映画・国内ニュース
音楽
20 Viewsic ポップス・ロック
21 スペースシャワー 国内のロック
スポーツバラエティ・カルチャー
22 Oki Doki バラエティ・カルチャー
23 ディスカバリー 自然発見・ドキュメンタリー
24 ゴルフネットワーク ゴルフ情報・ツアー中継
25 スカイ・A スポーツ・情報・音楽
26 LET's TRY 受験学習・資格学習
27 スポーツ・アイ スポーツ
28 GAORA スポーツ・エンターテインメント
29 ショップチャンネル 通信販売
30 J-SPORTS 内外サッカー・他スポーツ
ニュース・地域情報
31 コミュニティチャンネル 地域情報
32 日経サテライト 経済動向・ビジネスニュース
33 朝日ニュースター ニュース・ドキュメンタリー
34 NNN24 ニュース
36 CNNニュース 国際ニュース
37 BBCワールド 国際ニュース
39 お天気情報 広域・地域天気予報
映画・ドラマ・アニメ
40 CSN1ムービー 内外映画
41 スーパーチャンネル ドラマ・映画
42 チャンネルNECO 邦画専門
43 スタープラス 映画・ドラマ
45 ファミリー劇場 映画・ドラマ・アニメ
46 キッズステーション アニメ・漫画
47 カートーンネットワーク アニメ・漫画
有料チャンネル(注2)
51 衛星劇場 有料・邦画
50 スター・チャンネル 有料・洋画
24 WOWOW 有料。映画・スポーツ・音楽
52 グリーンチャンネル 有料。競馬中継・農業

(注1)再送信:普通の放送と同じ内容が放送される。
(注2)有料チャンネル:ペイチャンネルともいい、追加的な料金が必要である。

 調査対象エリアとしては、ジェイコム湘南の第T期のエリアの中から5町丁を無作為に選び、サンプルを作成した。作成は98年12月の時点で、対象エリアの世帯数は3720、加入数は469、非加入数は3251、加入率は12.7%であった。サンプル数は、加入者は400、非加入者は490である。住民基本台帳から無作為抽出を行い、加入者との重複サンプルは除外した。

 調査は99年1月下旬から2月半ばにかけて留置回収法で実施した。調査サンプルと回収数を表3.1-3に示す。世帯主ないしは家庭内の決定に関して世帯主に代わる家族を回答者とするように指定した。有効回収数は加入世帯で71.5%、非加入世帯では60.2%であった。
 

表3.1-3 調査サンプル数と回収数
  母集団 サンプル数 有効回収数 有効回収率
加入世帯
469
400
286
71.5%
非加入世帯
3251
490
295
60.2%
合計
3720
890
581
65.3%

3.2 ケーブルテレビへのメディア移行の姿   目次へ戻る

(1)加入に関する様々な層の分布

 ケーブルテレビへの加入は、まずその地域のケーブルテレビの存在を知ることから始まる。加入者は当然知っているわけだが、非加入者の中には知らないものも存在しうる。今回の調査によると、非加入者295名の中には「知らない」と答えた回答者は31名(無回答3名を含む)いた。264名は知っていた人である。そこで加入者と非加入者のサンプルの抽出率でウエイトバックして、この地域のケーブルテレビの認知度合いを求めたのが図3.2-1である。認知率は90.8%とかなり高いものである。


図3.2-1 地域ケーブルテレビジェイコム湘南の認知


図3.2-2 ケーブルテレビの認知と認知世帯の構成

 調査では非加入者に加入検討の経験の有無について聞いている。認知している人264名のうち、65名(24.6%)は検討者であり、7名(2.7%)は検討中である。加入者は当然ケーブルテレビの存在を知っており、かつ加入の検討を行った層であるから、加入者と非加入者の抽出率を用いて地域の全体像を予測すると、図3.2-2が得られる。この図から次のことが明らかになる。

  1. 地域では約9割の世帯がケーブルテレビの存在を知っているが、57%はあまり関心を示さず、加入を検討した層は34.0%(加入、検討中、検討非加入の合計)である。
  2. そのうちの12.6%が加入に至り、2.1%は現在加入を検討中であり、19.3%は検討したが加入を止めている。

 十分に認知はされているが、関心を示さない層は過半で大きいこと、関心を示して一時加入を検討する層は全体の1/3とかなり多いが、そのうちの1/3きり加入に至らないことが分かる。ケーブルテレビの加入者に至るのは、なかなか狭い門である。

(2)テレビ放送メディア間の移行

 次に加入者がケーブルテレビに加入する前と非加入者の現在のテレビ放送メディアの状況を図3.2-3に示す。全体としてはVHF、UHF、BS−NHKの比率が高く、次いでWOWOWとCS放送(ここではCSアナログ9名、CSデジタル7名であったので、双方をCS放送として扱う)である。UHFとBS−NHKは双方に差はないが、WOWOWとCSでは大きい差がある。WOWOWとCSの加入者はCATVに移行しやすいことを示している。


図3.2-3 加入者の従来のメディアと非加入者の現在のメディア(χ2 ***)


図3.2-4 従来と現在のメディア採用の分布

 この移行の変化をメディア毎に見たのが図3.2-5である。5種類の従来メディアからもケーブルテレビへ移行する仕方では、CS放送とWOWOWでは30%前後がCATVへ移行している。全体としては、より高度な放送サービスの利用者ほどにCATVへ移行する可能性は高いと言うことが出来る。なおBS−WOWOWの利用者からは、ペイ加入者に移行する比率は、他のメディアと比較すると高い。これはBS−WOWOWの加入者が移行後もWOWOWに加入する比率が高いためである。この様に見てくると、ケーブルテレビへの移行は、「ケーブルテレビ以外のテレビ・メディアに加入すると移行が難しくなる」と言うことは起こりにくく、どの従来メディアでも満たされない魅力を持っているということが予想される。

 なお例えばケーブルテレビからCS放送への移行も関心が持たれるが、この移行については、ジェイコム湘南によると、まだ顕在化してはいないとのことである。


図3.2-5 メディア別のケーブルテレビへの移行比率


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