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3.4 ケーブルテレビへの加入動機と関心

(1) 加入動機/関心の平均値の分析

 本調査では、ケーブルテレビの加入者および検討非加入者(加入検討したが加入していない世帯)には、加入動機を聞いている。加入の検討をしたことがない未検討者には、加入動機と同じ項目を使って、関心の度合いを聞いている。双方ともに20項目の動機の項目毎に同じ3段階の尺度(1:関心ある〜3:関心ない)である。そこでこの3グループの加入動機/関心度合いを平均値で図3.4-1に示す。加入グループの関心の大きさの順に項目を配列している。

 評価値が2→1の範囲では、加入−非加入はどの項目でも大小関係は明らかである。他方、評価値が3→2の範囲では、「ケーブルで地域番組」、「インターネットなどの多面的利用」などでは検討非加入グループの評価値が加入グループより大きくなっており、双方の評価値は拮抗している。この様な傾向から見ると、評価値が2→1の範囲にある項目が、加入−非加入の選択に有効に作用している可能性が高い。


図3.4-1 ケーブルテレビへの対応層別の加入動機/関心の平均値の分布
平均値の検定:*:Sig.≦0.05、**:Sig.≦0.01、***:Sig.≦0.001、****:Sig.≦0.0001

(2) 加入動機/関心の因子スコアによる分析

 前節では20の動機項目については、全体的な傾向を見てきた。しかし項目数が多く、全体の構造を理解しにくい。そこで20の動機項目の評価データに対して因子分析を適用し、着目すべき項目を因子に集約して減らすことにする。さらに因子スコアを層別の分析の対象となる変数として扱うことにより、分析をしやすくすることが出来る。

 動機項目の評価データに対して因子分析を適用した結果を表3.4-1に示す(なお加入層と検討層のデータ、未検討層のデータに対して、それぞれ独立に因子分析を適用して傾向を見たが、双方の場合にほぼ同じ様な因子が現れることが分かった。したがってこの様な因子の出現はテレビ視聴者に共通的な構造の存在を示していると思われる。それを踏まえて、全サンプルに対して因子分析を適用した)。5因子で全分散の65.5%をカバーしている。各因子の名称は、対応する変数の概念を総称して作成した。それは社会教養指向、映画娯楽指向、スポーツ指向、画質向上指向、反アンテナ指向である。
 

表3.4-1 加入動機の因子と対応する変数
因子(平方和、寄与率) 対応する変数(係数の大きい順↓→↓)
第1因子(3.42,17.1%)
1.社会教養指向
h.ケーブルで経済ニュース g.ケーブルでニュース(海外)
f.ケーブルでニュース(国内) x.新技術を早期利用
y.インターネット等の多面的利用 j.ケーブルで地域番組
第2因子(2.99,14.9%)
2.映画娯楽指向
q.有料チャンネルでWOWOW  k.ケーブルで音楽
p.有料チャンネルで映画 d.多CHで色々番組
e.ケーブルで映画 c.BS視聴 #
第3因子(2.38,11.9%)
3.スポーツ指向
m.ケーブルでゴルフ番組
l.ケーブルでスポーツ
i.ケーブルで天気予報 #
第4因子(2.22,11.1%)
4.画質向上指向
a.難視の解消
b.映像向上
o.ケーブルで子供番組 #
第5因子(2.11,10.5%)
5.反アンテナ指向
v.家の美観上でアンテナ不要
u.アンテナ更新不要

(注)平方和と寄与率はバリマックス回転後の値である。寄与率の合計は65.5%である。
#:寄与の小さい変数(<0.45)である。

 なお第4因子の画質向上指向には、「b.難視でないが映像向上」と「a.難視解消」の2つの変数が寄与している。通常はこの2つは別の概念と見られやすいが、双方の相関が高く、したがって利用者には同一の概念として理解されていることを補足しておく。

 次に因子分析の対象となったサンプルには、サンプル毎に各因子の強さを示す因子スコアを持つ。ここではそれぞれが5つの因子スコアを持つ。この因子スコアによってサンプルの傾向を知ることが出来る。そこでサンプルを特定の視点からグループ化し、そのグループの比較をすることにより、層別の分析を行うことが出来る。以下ではこれらの因子スコアを用いて、動機の傾向を見ていく。

a.加入者、検討非加入者、未検討者の動機/関心

 まず対象サンプルを加入者、検討非加入者、未検討者の3グループに分け、3グループ毎の因子スコアの平均値を図3.4-2に示す。調査での評価は、1.関心ある〜3.関心ない、の3段階で行っており、小さいデータの方が傾向が強いことを反映し、因子スコアも小さい方が傾向が強く、大きい方は傾向が弱くなっている。したがって各因子軸のスコアには正も負もあるが、負で絶対値が大きい方(より外側)が傾向が強く、正で絶対値が大きい方(より内側)は傾向が弱いこととなる。また平均値の分散分析の結果を、有意性がある場合については、各軸毎に*で示している。その範囲は、*:Sig. ≦0.05、**:0.01≦sig.<0.05、***:0.001≦Sig. <0.01、****:Sig. ≦0.001である。

 図3.4-2によると、傾向は次のようになっている。大筋の結果は前節と類似しているが、議論はずっと正確かつ理解容易となっている。


図3.4-2 加入者、検討非加入者、未検討者の加入動機/関心

  1. 加入層はほぼ中央に位置し、どの軸においても外側であるのに対して、検討非加入層、未検討層はいずれも加入層の内側で、関心は弱い。
  2. 加入層と検討非加入層の差はあまり大きくないが、画質向上、反アンテナ、スポーツの3軸で差が生じ、特に画質向上が大きい(この場合のみ平均値差の有意性は **)。
  3. 検討非加入層と未検討層の差は、画質向上と反アンテナでは小さいが、社会教養、映画娯楽、スポーツの3軸で大きい(有意性は ***〜****)。この3軸がグループ差を作り出している要因の候補と考えることが出来る。
  4. 全体を通してみると、社会教養、映画娯楽、スポーツに関心を持つと、各世帯はケーブルテレビの加入を検討することになり、さらにそれらのうちで画質向上意欲が強いと加入に至る、と言うのがグループ差の平均像である。


b.メディア選択と動機/関心

 これまではケーブルテレビへの加入を中心とした動機/関心度を見てきたが、ここでは現在選択しているテレビメディア別の動機/関心度を分析する。テレビメディアとしては、CATVベーシック、CATVペイ、地上波テレビ、BS−NHK、BS−WOWOWの5つを見る(CSはサンプル数が少なく、除外した)。図3.4-3はそれぞれのメディア別の動機/関心度の因子スコアの平均値を見たものである。*印は以前と同じ平均値の分離の有意性を示すものである。反アンテナ軸以外のすべての軸で、平均値は有意で分離している。これらのグラフからテレビメディア選択の指向性を理解することが出来る。また動機/関心がメディア選択要因となりうることを示している。


図3.4-3 テレビメディア別の動機/関心

  1. 地上波は中心部の概して内側に位置しており、社会教養、スポーツ、反アンテナが強まると、BS−NHKとなる。
  2. これに対してさらにスポーツと画質向上が強まり、社会教養が地上波より弱まったのが、BS−WOWOWである。
  3. これらの地上波系・衛星系のテレビメディアに対して、ケーブルテレビは概して外側に分布している。BS−WOWOWで社会教養とスポーツの指向が強まったのが、CATVベーシック加入層である。
  4. さらにCATVベーシックでスポーツが若干弱まり、映画娯楽が強まったのがCATVペイ加入者層である。

c.他の属性と動機/関心

 加入動機/関心については様々な属性から相違を見ることが出来るが、ここでは後2つの属性、世帯主の年齢と住宅形態における傾向をみておく。

 年齢別に見た傾向を図3.4-4に示す。動機/関心の中でも年齢に依存するものと依存しないものがある。年齢に単調に依存する軸は、映画娯楽が明確である。映画娯楽は20代が最も強く、60代が最も弱く、傾向は顕著である。他方で他の3軸は単純な年齢依存を示してはいない。次いで反アンテナも同様な傾向を示している。但しこちらは逆で、高齢ほど強く、若年ほど弱い。この2つほど単純ではないが、画質向上も若年が関心が強く、高齢が弱い傾向を示している。この様に見てくると加入要因は年齢依存がある可能性がある。


図3.4-4 世帯主の年齢と動機/関心

 次に住宅形態と動機/関心の関係を図3.4-5に示す。一見してこの図は世帯主の年齢の図と類似していることが分かる。細かく見ていくと、社会教養とスポーツ以外の3軸は、図3.4-4における20代〜30代とその他の傾向が、図3.4-5の集合・賃貸〜集合・分譲とその他の傾向とほぼ同じである。集合住宅に多く住む20代〜30代は、共同利用アンテナが与件であり、アンテナに悩む必要がないため、反アンテナ指向は弱い。その分加入動機は弱いが、きれいな映像を見たいという画質向上動機は強い。この様に見てくると、住宅形態が加入を左右する要因となる可能性がある。


図3.4-5 住宅形態と動機/関心


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