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3.6 電波障害の効果

(1)電波障害の効果の程度

 都市部では高層ビルディングや高速道路・鉄道などで電波障害が起こり、テレビの映りが悪くなる都市難視がよく起こる。さらに地形上でテレビの映りが悪くなる地形難視もある。一般にこれらの電波障害がテレビの難視を引き起こし、ケーブルテレビの加入を促進する効果を持つことは、よく知られていることである。本調査ではケーブルテレビでなく、通常のアンテナでテレビを見た場合に、テレビ映りがどの様になるかを聞いている。加入者と非加入者で、この場合のテレビ映りがどの様になっているかを調べたのが図3.6-1である。同図によると、非加入層では5.8%の不明と無回答の合計は、加入層では26%弱にも達している。これはケーブルテレビに加入していると、通常のアンテナを経験しないことがあり得るので、アンテナでの状況が分からないこともあるためと見られる。


図3.6-1 加入者と非加入者の難視状況(Sig.:****)

 そこで不明と無回答を除外した回答票で集計すると、図3.6-2が得られる。その図によると、加入層と非加入層ではあまり差はなく、有意性もない。したがって図3.6-1で強い有意差があったのは、加入層の26%弱に及ぶ不明と無回答のためと見られる。


図3.6-2 加入者と非加入者の難視状況(不明と無回答を除外)

 ちなみに他の調査事例(横浜市南区)のデータを図3.6-3に挙げておく。この場合には非加入者の構成は図3.6-1と類似しているが、加入者は大きく異なり、明らかに電波障害故の加入があることを示している。もともと横浜市南区と茅ヶ崎市では電波障害の程度が異なり、前者の場合には都市難視と地形難視が強い場所であったのに対して、後者は平坦地で大きい建築物も少ない地域であった。このため後者の場合には、都市難視や地形難視がケーブルテレビの加入者を増やす可能性は小さかった。その結果が図3.6-2の様に、加入と非加入の双方で有意差がない結果をもたらしていると考えられる。


図3.6-3 他地域での電波障害と加入(横浜市南区の場合)(Sig.:****)

3.7 住宅形態の効果   目次へ戻る

 住宅形態のうちで集合住宅の場合には、通例共同利用アンテナが整備されている。この場合には、各世帯は独自でケーブルテレビの引き込み線を設けることが出来ず、住宅の所有者や管理組合の合意のもとで、初めてケーブルテレビへ加入することが可能となる。合意がない場合には、加入することは出来ない。つまり集合住宅の居住者は、自由意志で加入することが出来ない場合があるのである。戸建て住宅の場合にも共同利用アンテナを利用している場合があるが、この場合には共同利用アンテナの組合から脱会し、単独でケーブルテレビへ加入することが出来る。したがって多くの地域では、この効果故に集合住宅の世帯のケーブルテレビへの加入率が低くなっている場合がある。

 そこでこの地域の加入状況の住宅形態への依存性を調べた。その結果を図3.7-1に示す。同図によると、戸建て住宅の比率は加入者が58.0%であるのに対して、非加入者は72.9%であり、加入者の方が戸建て住宅の比率が低い。これは通例見られる場合とは逆の傾向である。


図3.7-1 加入/非加入と住宅のタイプ(Sig.:***)

 さらに調査によると、非加入者のうちで集合住宅の共同利用アンテナであるが故に加入の検討をしなかった世帯が5世帯あり(非加入者調査票 問11付問1)、また検討したが共同利用アンテナ故に加入しなかったのが1世帯あった(非加入者調査票 問12(2)付問2)。そこで仮想的にこれらを加入者として、抽出率を用いて新たな加入−非加入別の住宅形態を求めてみた。これが図3.7-2である。同図では戸建て住宅の比率は、加入者では58.0%から50.9%に低下し、非加入者では72.9%から74.4%に増加している。これが調査結果に基づいた自由意志下で実現されると考えられる住宅形態比率である。この様にしてみてくると、明らかに戸建て住宅より集合住宅の方が加入が促進されており、図3.7-3のような他地域に見られる住宅制約の効果を見ることは出来ない。


図3.7-2 住宅制約を除いた場合の加入/非加入と住宅のタイプ


図3.7-3 YTVに見る加入/非加入と住宅のタイプ(χ2 Sig.:****)

 この様な相違が生じた背景には、ケーブルテレビのセールスの方法の違いがあると考えられる。ジェイコム湘南では、集合住宅の設備をケーブルテレビ向けに改修する費用を加入者負担とせず、事業者負担で進めている。そのために相当数に集合住宅の設備更改が済んでおり、集合住宅制約が小さくなりつつある。さらに加入のための初期費用が、戸建て住宅では2万円であるのに対して、集合住宅では3千円とかなり安価に設定されている。このために加入に関する住宅制約は、むしろ結果としては従来と逆に現れてきていると考えられる。また加入時の初期費用が戸建て住宅の加入者を抑制していることが予想される。


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