目次へ戻る


3.8 テレビ視聴傾向の効果

 ケーブルテレビの加入の決定に、決定者の先有傾向としての日常的なテレビの見方が何らかの形で関与するであろうと言う点は、想像がつくことである。本調査では視聴傾向として、表3.8-1の質問を調べている。なおこれらは西野ら(1993)を参考にした。
表3.8-1 視聴傾向の質問
質問 回答選択肢
Q3a 見たい番組があるときだけテレビをつける
Q3b 仕事や勉強のときに、何となくつけておく
Q3c 見る番組を事前に調べて決めている
Q3d テレビを見る直前に見たい番組を調べる
Q3e テレビをつけて見たい番組を捜す
Q3f コマーシャルの間は別のチャンネルに切り換える
Q3g 面白い番組が無くてチャンネルをいろいろと回す
Q3h 深夜0時過ぎまでテレビを見る
Q3i 他の人の見ている番組をおつきあいで見てしまう
Q3j つまらないと思ってもつい見てしまう
Q3k 見たい番組が無い場合はテレビをこまめに消す 
1.よくする方である
2.どちらとも言えない
3.あまりしない方である 

 この11個の質問の回答では、Q3b、Q3e、Q3h、Q3kが、加入に関連する2グループ(加入、非加入)間の差で有意な傾向を示している。そこでこの場合も変数が多いので、因子分析を利用して傾向の集約をはかった。その結果、全体の分散の68.1%をカバーする5つの因子を得た。各因子の意味合いを、表3.8-2に示す。

表3.8-2 視聴傾向の因子の定義
因子(平方和、寄与率)  因子の内容
第1因子(1.9,16.8%)
走査視聴
Q3f,Q3g,Q3e
CMの時や面白い番組がない時にチャンネルを回し、またつけてから番組を捜すなど、走査的にテレビを見るの傾向
第2因子(1.8,16.5%)
環境テレビ視聴
Q3b,Q3k(-),Q3h
ながら的な視聴が多く、見たい番組がなくてもテレビをつけておく傾向。テレビはその人の環境になっている。
第3因子(1.5,13.2%)
追随視聴
Q3i,Q3j
他人の番組をつき合いで見たり、つまらなくても見てしまう傾向
第4因子(1.4,12.3%)
計画視聴
Q3c,Q3a
見る番組を事前に決め、選択的に番組を見る傾向
第5因子(1.0,9.3%)
確認視聴
Q3d
テレビを見る直前に番組を確認する傾向

(注)平方和と寄与率はバリマックス回転後の値である。寄与率の合計は68.1%である。

第1因子は「走査視聴」で、チャンネルを頻繁に変えてみる傾向である。第2因子は「環境テレビ視聴」で、常にテレビをつけておきたがる傾向である。第3因子は「追随視聴」で、自分で主体的に番組を選ぶより、他者に追随して選ぶことが多い傾向である。第4因子は「計画視聴」で、事前に番組を決めてテレビを見る傾向であり、最後の第5因子は「確認視聴」で、計画視聴ほどではないが、見る直前に一応番組を確認してから見る傾向である。

 次にここで抽出した5つの因子の因子スコアがケーブルテレビの加入に関するグループでどの様な傾向を持つかを示したのが、図3.8-1である。表3.8-1ではデータとしては、「1」が「よくする方である」で傾向が強く、「3」は「あまりしない方である」で傾向が弱い。したがって因子スコアは絶対値が大きい負の値で傾向が強く、絶対値が大きい正の値で傾向は弱くなる。このため同図では外側に行くほど傾向が強くなり、内側に行くほど傾向は弱くなる。

 図3.8-1は全体の分布を見ると、加入と検討非加入の層が概して外側にあり、未検討層は内側にある。しかし各軸によってかなり傾向は異なる。最も明確に分かれているのは環境テレビ視聴で、平均値に有意な分離があり、加入層に対して検討非加入層、未検討層はそれぞれ徐々に強さが低下している。環境テレビ視聴の強さがメディア選択に強く影響している可能性が理解される。環境テレビ視聴以外の軸では、加入層と検討非加入層の差は追随視聴と計画視聴にあり、前者で検討非加入の方が強く、後者では弱い。検討非加入層と未検討層の差は、走査視聴と計画視聴にあり、検討非加入層は前者で強く、後者では弱い。


図3.8-1 ケーブルテレビの加入と視聴傾向

 次にテレビ放送メディア別の視聴傾向を図3.8-2に示す。この場合も環境テレビ視聴で有意な差が現れており、選択されているメディアの区別がその3つの軸で説明される可能性を示している。衛星系<地上波<CATVベーシック<CATVペイ の順位強さが現れているのも関心を持たれる。各メディアともにそれぞれ固有の形を持っているようだが、規則性は不明である。


図3.8-2 メディア選択と視聴傾向

 次にもう一つ、視聴傾向の年齢依存性を示す。図3.8-3であるが、この図では走査視聴、環境テレビ視聴の軸での各層の平均値の拡がりは非常に顕著である。それに対して、他の軸では分離は顕著ではない。さらに、この2つの軸では年齢依存性も明確で、年齢とともに単純に減少している。全体として見ても、60代以上では視聴傾向は消極的であるのに対して、20代では対照的に積極的であることが分かる。


図3.8-3 年齢と視聴傾向

 これまで見た来たように、日常的なテレビの視聴傾向は、テレビメディアの選択に有意に作用している可能性が高い。他方本調査では、テレビ視聴に関する先有傾向として、番組の嗜好性、テレビの効用に対する該当度(利用と満足研究における効用の各人での当てはまり具合)を調べている。これらは以下で述べていく。


次へ進む
目次へ戻る