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2.日韓共催W杯に関する動向
2002年に日本・韓国共同開催で行われたFIFAワールドカップ。日本中が注目したこの大会は、連日様々なメディアで報道された。それらのメディアを通して情報を収集するうちにある点に気がついた。
それは、特にテレビを中心としたメディアとインターネットの情報には差があるのではないかということである。インターネットの情報は、試合を見ていて感じた疑問や世論などがはっきりと書かれていた。しかし、テレビを中心としたメディアではそのような疑問などには一切触れていなかった。
それは、大会が始まった当初からであった。開会式の最中に起こったサポーターのブーイングを無視し、素晴らしい開会式であることばかりを強調していた。一部のスポーツサイトではこの時点で「日本のメディアはこのW杯に関しては批判精神を失った」、「観衆のブーイングに反応を示さないのはメディアの立場を放棄したのと同じことだ」などと言われていた。
この差は大会が進行していくにつれて開いていった。特に、今回の大会では誤審疑惑の問題が浮上する試合が多く、そのことに対しての対応の違いが大きく顕われた。特に、イタリア対韓国の試合はインターネットでは誤審の疑惑があるとされた、トッティのプレーの分かりやすいアングルの写真や説明があり、海外の新聞などのサイトでも疑惑について書かれた。
しかし、テレビでは誤審の疑惑があるとされたトッティのシーンはカットされた。また、海外のテレビで放送されたそれらに関する映像は日本では放送されることはなかった。
さらに、国立競技場などで行われたパブリック・ビューについてもテレビの報道は偏ったものだった。ドイツ対韓国の試合がパブリック・ビューで行われたという報道では、韓国チームの応援をするサポーターにばかりスポットを当て、かなりの数であったドイツサポーターにはまったく触れることがなかった。
テレビ番組でも疑問が残るものがいくつかあった。タレントの飯島愛がサンデージャポンという情報番組内で前述のイタリア対韓国の試合に対して「トッティが退場した時のプレーの良く分かる背後からの映像をどんどんカットして放送している。」という発言をしたところ、話題を変えようと別のコメンテーターに話が振られ深く触れないようにされたということがあった。また、ドイツ対韓国の試合が中継されたとき、タレントの明石家さんまがドイツのユニフォームを着てスタジオに登場したところ司会のアナウンサーから「どうして韓国チームを応援しないのか」というようなことを言われるという場面もあった。
テレビだけでなく活字のメディアでも似たようなことがあった。韓国で行われた試合を現地で観戦し、その記事を送っていたあるスポーツライターによれば「送った記事は活字のメディアには掲載されなかった」というのである。しかし、その記事はインターネットでは公開されていた。
これらの出来事や、インターネットの動きが大きくなるにつれてテレビなどのメディアでも誤審の問題を取り上げるようになった。だが、それは「誤審疑惑」とは言われておらず、判定「ミス」問題としての報道であった。その頃には、インターネットでは「テレビなどのメディアに対する批判」が意見の大半を占めるようになっており、テレビなどのメディアに対する不信感が大きくなっていた。特に、掲示板サイトなどでは中継を見ていて感じた疑問やあからさまに分かる問題点がテレビでは一切触れられていなかったという主旨の書きこみが連日かなりの数にのぼっていた。
また、「VOTE ジャパン」というアンケートサイトの投票でもそれは顕著に表れている。このサイトの「賛否両論、W杯報道!日本のメディアは信用できたか?」というテーマの投票では、総投票者数17,675人のうち実に99%、17,444人が「信用できなかった」、「伝えられるべきことが伝えられなかった」と答えている。「信用できた」、「冷静で客観的な報道だった」と答えたのはたったの1%、231人にとどまった。
このようなインターネットの情報を得ていくうちに、テレビなどのメディアが発信する情報に不信感を持ち、このような疑問や不信感を持つ人は多いのではないかと考えるようになった。
ところが、テレビなどのメディアから主に情報を得ており、インターネットはまったくと言っていいほど利用していなかった人から今回のワールドカップに対する感想を聞いてみると、「とても良い大会だった」、「大成功だったと思う」という意見を多く聞いた。
以上のように話を聞いたり、実際に見たりした体験から、インターネット利用者と非利用者のテレビなどのメディアに対する考え方には違いがあるのではないかという考えを持つようになり、調査のテーマとして設定した。