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4.まとめと今後の課題

 日韓 W杯の状況を知る情報源は、今回の文教大生を対象とした調査では、テレビが中心であるが、1/3の人々はインターネットも利用していた。ところがインターネット利用者では、利用時間が1時間/日未満の利用者と11時間以上の利用者ではW杯の認識に強い違いがあった。また、インターネット非利用者のW杯の認識は、1時間/日未満のインターネット利用者と同じような傾向が見られた。 

 インターネット利用者の情報源には次のような差があった。1時間/日未満のインターネット利用者は、試合結果などのデータを得るためにW杯公式サイト、ポータルサイトのスポーツを多く利用している。他方、1時間/日以上のインターネット利用者は、結果を得るためのサイト(ポータルサイトのスポーツなど)の利用も多いが、国内個人サイト・掲示板サイトなどの個人(一般)の意見を聞くサイトの利用も多かった。これらの国内個人サイト・掲示板サイトなどは1時間未満の利用者はほとんど利用していなかった。(3-2-3)

 回答者と「インターネット非利用と1時間/日未満の利用」と「1時間/日以上」のインターネット利用の2つのグループに分けて、W杯の認識に差を見た。すると、ダイジェスト番組・ワイドショーの「誤審問題を取り上げていたと思うか」という設問や、新聞の「論調が気に入らないと思ったか」という設問では両者に大きな差が生じた。(3-1-7〜図3-1-9)また、1時間以上の利用者はインターネットの情報とテレビ・新聞の情報には違いがあると感じているが、1時間未満の利用者は違いを感じていない結果になった。(3-2-2)

 これは、情報源に対応してW杯に対する認識に差が発生していることを表している。特に、マスメディアのW杯報道の姿勢に認識に差が出ている。 この報道姿勢とは次のような内容である。主要なメディアは今回のW杯を「視聴率を得るための最大のイベント」という視聴率獲得のための手段と考えていて、大会にマイナスイメージが与えられるような情報を意識的に避けた。テレビ・新聞などのマスメディアは誤審問題を取り上げることに消極的で曖昧な報道に終始していたり、過剰に日韓友好をアピールしたりしていた。(出典:マス・コミュニケーション研究 No.62 「W杯と日本の自画像、そして韓国という他者」ファン・ソンビン)

 インターネット1時間/日以上の利用者は、インターネットから無編集の多くの草の根的な情報を得ていた。このためにマスメディアに作為性を感じ不信感を持つようになり、韓国への心理的な距離感を大きくしたと考えられる。図3-1-6を見ると、1時間/日未満・非利用者は今回のW杯について好意的で、日韓友好に効果を上げたという認識であるが、1時間/日以上の利用者は反対に若干否定的な認識となっている。このことから、マスメディアのW杯情報に関する編集行為がこのような認識さを作り出す原因になっていると考えられる。

 編集をすることによって情報が偏ってしまい、物事のありのままが伝わらない、我々の認識が左右されるとしたら大問題である。マスメディアには編集行為はつきものなので、我々は常にこのような問題と向き合っていると考えるべきである。そして、このような危険性を避けるために、我々は広く情報を得て、様々な角度から物事を見る必要がある。

 今回の調査では、1時間/日以上のインターネット利用者は回答者の1割強で、量的にはかなりマイナーな存在であった。したがって圧倒的多数には編集の作為性は認識されていない可能性が高い。しかし、テレビ・新聞などのメディアは依然、主要メディアとしての立場を保ちつづけている。
 今後、インターネット利用者がさらに増加し続ければ、今回垣間見られた“編集”に対する意義申し立ての機能は、さらに強まると考えられる。この点でマスメディアの一方通行的な情報発信は、変貌を迫られると考える。

 最後に、今回の調査で回答に協力を頂いた文教大学の学生の皆さんに謝意を表します。


〈参考文献〉
 


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