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第2章 研究の成果

2.1 サッカーにおける、日本人選手の海外移籍と国内リーグへの影響

       (1)テレビ中継視聴の現状

 ここではまず、現在のサッカーのテレビ中継視聴はどのようになっているのかを見てみる。まず、サッカーのテレビ中継をどの程度視聴しているかを集計した結果を図2-1-1に示す。サッカーのテレビ中継を見ているグループに該当する「よく見る」・「時々見る」という回答は、合わせて約57%となっており、半数以上の人が見ていることがわかった。


 次に、図2-1-1でサッカーのテレビ中継を見ているグループに該当する「よく見る」・「時々見る」の2グループを対象に、Jリーグの視聴頻度を図2-1-2に示す。Jリーグを月に1回以上見ているのが約60%で、「全く見ない」という回答が約40%となっている。半分以上の人がJリーグを見ていることがわかった。
 

 次に、海外リーグの視聴経験を図2-1-3に示す。見たことが「ある」という回答が約70%となり「ない」という回答を大きく上回り、またJリーグよりも多い。多くの人が海外リーグを視聴したことがあることがわかった。
 

(2)日本人選手の海外移籍とJリーグへの影響

 ここでは日本人選手の海外移籍とJリーグへの影響を見てみる。まず前に述べた海外リーグ視聴経験のある102人を対象に、日本人選手の海外移籍が、海外リーグを見るきっかけとなったか否かを聞いた。その結果を図2-1-4に示す。「はい」という回答が約60%である。
 


 

 次に、日本人選手の海外移籍を契機に海外リーグを見るようになった人とそうでない人と現在のJリーグ視聴頻度の関係を図2-1-5に示す。ここでは日本人選手の海外移籍を契機に海外リーグを見るようになった人を移籍視聴グループ、海外移籍が契機でなかった人を非移籍視聴グループと呼ぶことにする。移籍視聴グループと非移籍視聴グループの差は次のような点にある。移籍視聴グループはJリーグを見るのは7割強で、非移籍視聴グループの6割弱より多い。移籍視聴グループは1回/月程度の層が4割強と多く、2回/月以上では非移籍視聴グループの方が多い。ちなみに5回/月以上を6回/月として平均値を求めると移籍視聴グループ、非移籍視聴グループともに1.5回/月前後である。海外移籍を契機に海外リーグ「見るようになっていない」と答えて、Jリーグを「全く見ない」と回答した人は、元々海外リーグしか見ていなかった人だと予想される。
 


 

 次に、移籍視聴グループと非移籍視聴グループの最近のJリーグ視聴変化を調べた結果を図2-1-6に示す。移籍視聴グループの視聴が「増えた」という回答が約27%、「減った」という回答が約47%である。それに対して、非移籍視聴グループの「増えた」という回答は約33%、「減った」という回答は25%である。日本人選手の海外移籍はJリーグの視聴に影響を与えていることがわかった。
 


 
 
 
 

 次に、移籍視聴グループ・非移籍視聴グループと、Jリーグの最近のさまざまな魅力の変化を図2-1-7に示す。この図はさまざまな魅力が「1.増した」、「2.やや増した」、「3.変わらない」、「4.やや減少した」、「5.減少した」と質問している選択肢の番号をグループ毎に平均したものである。移籍視聴グループ・非移籍視聴グループのどちらのグループとも、どの魅力においても「増した」という回答が多く、どちらのグループともJリーグの実力を認めており、また両グループ間にあまり差はなかった。つまり、どちらのグループとも、Jリーグに対して同じように評価しているとわかった。ただ、「話題性のある監督の活躍」の項目では、移籍視聴グループの方が魅力が増えたと評価しており、非移籍視聴グループとの差が見える。全体的に移籍視聴グループの方が非移籍視聴グループよりJリーグを評価していることが注目される。
 


 

 次に、移籍視聴グループ・非移籍視聴グループと海外移籍についての「日本人が世界レベルで活躍することはうれしい」、「日本代表が強くなるために効果的だ」、「Jリーグの人気が下がる」の3つの感想との関係を図2-1-8に示す。この図はグループ毎に、「1.肯定」、「2.どちらでもない」、「3.否定」の選択肢の番号の平均値を求めたものである。3種類どの感想に対しても、日本人選手の海外移籍を契機に海外リーグを「見るようになった」人の方が、「肯定」という回答が多いという結果になった。「Jリーグの人気が下がる」という感想においては、若干肯定気味ではあるものの、かなり「どちらでもない」に近い評価である。平均像としては海外移籍はある程度は「Jリーグの人気が下がる」可能性はあるものの、日本のサッカーにとっては非常に好ましいとの判断である。
 


 


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