1.1 研究の目的と背景
若者の世代にとって携帯電話はほとんど必需品である。誰もが持っている携帯電話は、誰とでも気軽にコミュニケーションをとることができる手段であるが、相手を選択できるという一面も持っており、選択的な人間関係を築く道具となっている。例えば、付き合いの深い人とは徹底的にコミュニケーションをとるが、携帯電話に登録されていない人とは全く話さない。また、話したくない相手には携帯番号やアドレスを教えなかったり、電話に出ないこともできる。電波事情を理由に電話を一方的に切ることも可能だ。1.2 研究の方法
このように、携帯電話が選択的な人間関係をより可能にし、若者の人付き合い下手を助長し、内輪だけの付き合いを増加させているのではないだろうか。若者の携帯電話利用をもとに、その人間関係のあり方を調べてみた。
(1)進捗経緯1.3成果の概要
・ 〈6月〉テーマ企画
・ 〈7月〉テーマ討論会
・ 〈8月〉調査票案を作成
・ 〈9月〉ゼミ合宿にて、討論と調査票の検討。調査票改訂
・ 〈10月〉調査実施。単純集計結果発表
・ 〈12月〉第1回レポート提出(2)研究の概要
〈調査の意図〉携帯電話を利用することのマイナス面を中心として、若者の人間関係のあり方を調べる。
〈調査対象者〉文教大学生
〈調査方法〉アンケート調査。(手配り手回収)
〈主な質問項目〉 ・携帯電話のメモリ登録件数
・携帯電話の受発信数、携帯メールの受発信数
・あまりよく思っていない相手からの電話やメールの対処法
〈依頼数と回収数〉 140枚→121枚
若者の携帯電話利用の実情を調査した結果、明らかになった点は下記のとおりである。・遊びの誘いや何か聞く時のメール利用は6割以上、メールの返信がないことへの不安は約7割と、人と直接会話をすることが少な くなったがゆえのコミュニケーションに対する不安感が見て取れた。
・携帯電話によってコミュニケーションが狭められていると感じている人は、全体の約2割で、ほとんどいなかった。しかし、選択的人 間関係を可能にする携帯電話の利点の面に対する考え方や、実際に好意を持っていない相手に対しての電話やメールの利用 傾向から、意識はしていなくても常に人によって付き合い方を変えていることがわかった。
・携帯電話によって人付き合いが下手になったと感じている人は、全体の1割以下で、否定的な回答が4分の3を占めているが、人 付き合い下手、普通、上手の3段階で分けた時、それぞれまんべんなく分布していた。
人付き合い下手な人は、好意を持っていない相手に対する電話、メールなども、人付き合い上手の人に比べると、うまく対処でき ていなかったり、メールの返信がないことへの不安も大きかったりと、携帯電話を「人付き合いの物差し的な道具」として利用する 傾向が顕著であった。・携帯電話の利用によっての自己中の度合いは全体的に低いのだが、自分がされたら不快なことの「自分だけ新しい携帯番号、メ ールアドレスを教えられていない」の40.8%や、携帯メールの利用について、自己中度別に平均値を求めた中での、「断りはメー ル」において、自己中度大が2.79と最も高かったことから、このように自己中な行動が行われていて、特に自己中度大の人とメー ルは切り離せないということが分かった。
また、電話とメールで比べると、やはりメール利用の方が自己中になりやすいことがわかった。・コミュニケーションが狭まっていると感じるかどうかは、一日のメールの送受信数に関係していることがわかった。
以上のことを踏まえ、次に表したのが研究の成果である。
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