(1)携帯電話と人付き合い下手に関する意識
まずは、携帯電話の利用によって実際に人付き合い下手になったと感じているかについて見ていくことにする。図2-3-1はその結果である。
「あまり思わない」「思わない」が4分の3を占めている。「そう思う」「少しそう思う」回答した人は1割にも達していない。(2)実際の人付き合い下手行動の状況
この結果から携帯電話の利用によって人付き合い下手が助長されたと感じている人は少ないということがわかる。
「メールでの会話は成立するが実際に会うと話が盛り上がらない人はいるか」という設問に対する回答から2つのグループ(「メールOK、会話OK」と「メールOK、会話NG」)をつくる。「メールは良いが電話では話したくない人がいるか」という設問に対する回答から2つのグループ(「メールOK、電話OK」と「メールOK・電話NG」)をつくる。この2つの設問をクロス集計した結果が図の2-3-2である。(3)メール利用と人付き合い下手度
「メールOK、会話OK」の人で「メールOK、電話OK」と回答したのは約3割で、「メールOK、電話NG」が7割も占めており、電話が苦手な傾向がみられた。「メールOK、会話NG」の人は、「メールOK、電話OK」の傾向が少し強く見られたが、「メールOK、電話NG」も4割もいた。全体的に電話で話すことが苦手な人が多いということがわかった。
電話も直接あっての会話も苦手な人は、人付き合い下手度が大きいと考えられる。そこで人付き合い下手度を「問13.メールでの会話は成立するのに、会うと話が盛り上がらない人はいるか」(回答選択肢 1.はい 2.いいえ)「問15.あなたはメールはするが、電
話で話したくない人はいるか」(回答選択肢 1.はい 2.いいえ)の2問で、両方とも選択肢1を選択した人を「人付き合い下手」、どちらか1つが選択肢1である場合を「人付き合い普通」、両方とも選択肢2を選択した場合を「人付き合い上手」の3つに分けた。次に人付き合い下手度によってメール利用に差があるかどうか調べた。下の図2-3-3は、その結果である。同図は、人付き合い下手、普通、上手の各グループ毎のメール利用状況の平均値を求めたグラフである。
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* は有意差がある
図2-3-3の結果、「友達からのメールが返ってこないと不安」は、「人付き合い下手」の平均値が1.69、「人付き合い普通」の平均値が2.17、「人付き合い上手」の平均値が2.87で、「人付き合い下手」は友達からの返信がないと不安になることが多くあり、人付き合い下手度が小さくなるにつれて、不安になる頻度は少ない傾向が見られる。
「友達から来たメールを返信しないと嫌われそうで怖い」では、「人付き合い下手」の平均値が2.64、「人付き合い普通」の平均値が3.02、「人付き合い上手」の平均値が3.72で、「人づき合い上手」は友達からのメールを返信しないと嫌われそうで怖いと思うということがあまりない傾向が見られる。
人付き合い下手のほうが「携帯の物差し的利用」が顕著に表れている。
「メールになると強気になる」は、「人付き合い下手」の平均値が2.61、「人付き合い普通」の平均値が3.32、「人付き合い上手」の平均値が3.67で、「人付き合い下手」よりも「人付き合い上手」の方がメールになると強気になることはないという傾向が見られる。
上図のメール利用8項目すべての平均値が「人付き合い上手」>「人付き合い普通」>「人付き合い下手」という結果になった。これにより人付き合い下手の方がメールに依存している傾向があると言える。
「人付き合い下手」グループでは、「返信しないと嫌われそうで怖い」の平均値が最も高く、「メールになると強気」が2番目に高かった。平均値が最も低いのは「相手によって文章を変える」だった。
「人付き合い普通」グループでは、「メールになると強気」が最も平均値が高く、「返しないと嫌われそうで怖い」が2番目に高かった。「相手によって文章を変える」が最も平均値が低かった。
「人付き合い上手」グループでは、「聞きたいことがあるときはメール」が最も平均値が低く、2番目が「相手によって文章を変える」、3番目が「遊びの誘いはメール」という順になった。平均値が高い順だと最も高かったのは「返信しないと嫌われそうで怖い」で、2番目に高いのは「メールになると強気」だった。
全体的にみて、「返信しないと嫌われそう」や「メールになると強気」ということは、3つのグループそれぞれの中では、あまり思わないようだ。
(4)好意を持っていない相手に対する携帯電話の利用状況と人付き合い下手
a.電話の利用
下の図2-3-4は、人付き合い下手度によって「好意を持っていない相手に対する携帯電話の会話利用」に差があるかどうか平均 値を求めたグラフである。b.メールの利用
* は有意差がある
「電波事情などにこじつけて電話を切る」では、「人付き合い下手」の平均値が4.14、「人付き合い普通」の平均値が3.46、「人付き合い上手」の平均値が4.15で、人付き合い下手と上手は同じ様な傾向が出た。これは、「人付き合い下手」は、嘘をつくようなことがあまりうまく出来ないため、平均値が高くなり、「人付き合い上手」は、人付き合いをすることが苦ではないので電波事情などとこじつけて電話を切るようなことはしないのではないかと考えられる。
また、「電話番号を変えても教えない」では、「人付き合い下手」の平均値が2.89、「人付き合い普通」の平均値が3.05、「人付き合い上手」の平均値が3.38で、「人付き合い上手」はどちらかというと全くないの方に寄っている。これは、「人付き合い上手」は人付き合いをすることが苦ではないので、電話番号を変えたら教えるが、「人付き合い下手」は人付き合いが苦手なので、電話番号を変えても教えないのではないかと考えられる。
それ以外の項目については、人付き合い下手、上手に関わらず、あまり差が見られない。
全体的に「着信履歴が残っていてもかけ直さない」「電話番号を変えても教えない」「電話に出ない」などは「よくある」寄りで、「着信拒否設定をする」「電波事情などにこじつけて電話を切る」「相手に番号を知られたくないため非通知でかける」など、あからさまな意思表示については「全くない」寄りで、人付き合い下手、上手の人ともに好意を持っていない相手に自分の気持ちをはっきり示すような行動には出ないことがわかる。
下図2-3-5は、人付き合い下手度のグループ毎に「好意を持っていない相手に対する携帯メールの利用状況」に差があるかどうかの平均値を求めたグラフである。
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* は有意差がある
自分からメールのやり取りを断つ」は、「人付き合い下手」の平均値が2.25、「人付き合い普通」の平均値が2.29、「人付き合い上手」の平均値が3.21で、「付き合い下手」「人付き合い普通」の方が自分からメールのやり取りを断つ傾向が見られる。
「絵文字を使わない、文章がそっけない」では、「人付き合い下手」の平均値が2.31、「人付き合い普通」の平均値が2.22、「人付き合い上手」の平均値が2.97で、「人付き合い下手」「人付き合い普通」の方が「人付き合い上手」に比べて絵文字を使わなかったり、
文章がそっけないという傾向が見られる。
「メールを読んだ後削除」については、「人付き合い下手」の平均値が3.75、「人付き合い普通」の平均値が3.32、「人付き合い上手」の平均値が4.08で、「人付き合い普通」は、「人付き合い下手」「人付き合い上手」に比べてメールを読んだ後削除するという傾向が見られる。
グラフの流れを見てみると、携帯電話の会話利用と同様、好意を持っていない相手には「自分からメールのやり取りを断つ」「絵文字を使わない、文章がそっけない」などのさりげない意思表示を含んだ行動は取っているが「メールを読んだ後削除」「メールを読む前に削除」などの行動に出る人は少ないようだ。
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