ここでは、携帯電話の利用で若者が自己中心的になっているのではないかという仮説のもと、回答者の自己中度(どのくらい自己中心的になっているか)を点数化して調べた。(1)自己中度の度合い自己中度の点数化の方法は、「問11a〜f.あまり良く思っていない人に対してとる電話の利用状況」、「問14g自分にとって都合の悪いメールが来た時は、そのメールを無視することがある」、「問16a〜fのあまり良く思っていない人に対してとるメールの利用状況」、「問22相手に電話をかけて欲しくてワン切りをすることがあるか」、「問26i用事も無いのにたびたび友達の誘いを断る」の15問で選択肢1(よくある)を選んだ場合4点、選択肢2(時々ある)を3点、選択肢3(どちらともいえない)を2点、選択肢4(あまりない)を1点、選択肢5(全くない)を0点とした。これらは、調査表作成の段階で、携帯電話利用により若者がどれだけ自己中になっているかを計るために設問に意図的に入れたものである。
まずは、全体の自己中度の点数分布を見ていくことにする。全15問で満点が60点、最低点が0点である。その結果を表したものが図2−4−1である。
最高点は53点、最低点は0点という結果であった。図2−3−1より24〜29が最も多く、次いで18〜23に多く現れている。平均点は23.3である。満点の60点と比較すると自己中度はあまり高くない。
次に電話とメールの自己中度の点数分布に差が見られるかを下のグラフで表した。
電話利用が問11a〜fと問22の7問で28点満点、メール利用が問14g、問16a〜fの7問で28点満点となる。 この結果を図2−4−2に示す。
電話利用の自己中度では最高点は27点、最低点は0点で、メール利用の自己中度の最高点は24点、最低点は0点である。図2?4?2より電話利用では8?11が最も多く、メール利用では12?15が最も多くなっている。平均点は電話利用が9.82点で、メール利用が13.5点である。下のグラフから見てもわかるように、電話利用よりメール利用の方が自己中度が高い傾向がある。(2)自分がされたら不快に思うこと
メールは直接会っての会話や電話と違い、相手には表情が見えなく、声も聞こえない。自分の心境は悟られずにすむ。嘘をついても相手にわからないので、その分相手に対して電話よりも自己中心的な行動をとってしまうと考えられる。また、若者にとっては電話よりもメールの方がよく利用しているため、このような自己中度がはっきり出てしまったと考えられる。
図2−4−3は自分がされたら不快なことの結果である。
どの項目もされたら不快と感じる人がいた。自分がされたら不快なことはどの項目も選択されていることから「されている=そのような行為をしている人がいる」とういことであり、実際携帯電話利用で自己中心的な行動をとっていることが分かる。(3)自己中度とメール利用
されたら不快なことで最も多いのは、自分だけ新しい携帯番号・メールアドレスを教えられていないで40.8%である。「自分だけ教えられていない」ということは、相手は自分のことを友達だと思っていないのだという疎外感を感じるため、不快に思う人が多いのではないかと考えられる。
次に、返事がない34.2%で、「返事がない=無視されている」と感じ、不快に思う人が多いのではないかと考えられる。続いて、「非通知での電話」33.3%、「チェーンメールを回される」26.7%、「勝手に番号を教えられる」26.7%、「勝手に電話を切られる」13.3%である。多いと思っていた「勝手に番号を教えられる」、「勝手に電話を切られる」はあまり多くなかった。
若者にとっては勝手にされるよりも、自分だけされないという存在を無視されるようなことの方が不快に思うようだ。
点数化した自己中度をもとにして、自己中度を3段階に分けてみた。
0〜18を「自己中度小」、19〜28を「自己中度中」、29?〜3を「自己中度大」とする。この3段階の自己中度によってメール利用状況に違いがあるかの平均値を求めたのが図2−4−4である。
「断りをメールで済ませる」、「自己中度大」の平均値が2.15、「自己中度中」の平均値が2.51、「自己中度小」の平均値が2.79で、自己中度が高い人の方が断りをメールで済ませる傾向が見られる。相手によって文章を変えるという設問では、「自己中度大」の平均値が1.73、「自己中度中」の平均値が1.72、「自己中度小」の平均値が2.24で自己中度が高い人ほど相手によって文章を変える傾向が見られる。
「メールになると強気」では差はほとんど見られず、自己中度大、小に関係なくメールでは強気にならない傾向が見られる。
全体的に見て「自己中度大」は、「自己中度小」に比べてメールに頼る傾向が見られる。これは、上でも述べてきたようにメールが若者にとって一番身近であること、そして、メールは表情も声も相手に伝わらない故、多少自己中心的な態度を取ったとしてもあまり影響がないため、自己中度が高い人はメールに頼る傾向があるのではないかと考えられる。
(4)自己中度と好意を持っていない相手とのメールの回数
「自己中な行動はメールに出やすい」このことは今までの結果から、わかることである。そこで、自己中度は好意を持っていない相手とのメールの回数に差が出るのかを調べてみた。
好意を持っていない相手とのメールの回数の回答選択肢 は(1.「0回」、2. 1〜2回」、3.「3〜4回」、4.「5回以上」)である。
図2−4−6は好意を持っていない相手とのメールの回数をクロス集計した結果である。
結果、「自己中度小」は3〜4回が47.4%で最も多く、「自己中度中」は1〜2回が64.9%で最も多く、「自己中度大」も1〜2回が64.1%と最も多い。
「自己中度小」は、好意を持っていない相手とでもメールのやり取りを多くする傾向が見られ、自己中度中、大の人は好意を持っていない相手とは1〜2回でメールのやり取りをやめてしまう傾向が見られる。
やはり、自己中度の低い人は好意を持っていない相手でもとりあえず返そうとするが、自己中度の高い人は好意を持っていない相手に対してそっけない態度をとってしまうようだ。
(5)自己中度と男女差
自己中度を男女で比較した結果が図2―4―6である。
男子学生は「自己中度小」が45.7%で最も多く、一方女子学生は、「自己中度大」が40.3%と最も多い。男子学生に比べ女子学生の方が、自己中度が高い傾向が見られる。
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