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第2章 携帯電話業界の動向
2.1 携帯電話の歴史

 携帯電話が登場したのは1979年。携帯電話と言ってもまだ持ち歩きはできない自動車電話(移動電話)のことだ。 これが車から離れ持ち運びが出来るようになったのは1985年。「ショルダーフォン」のレンタル開始が始まってからである。 ただ、名前の通り大きさはショルダーバッグ並、重さは約3kgとおおよそ気軽に持ち運べるというものではなかった。
 今の携帯電話のような形になったのは2年後の1987年。 体積は500cc、重さは750gまだ現在の携帯電話にはおよばない (2003年12月現在、PHSで最軽量68g、携帯電話は大体が110g前後で最軽量は86g)が 2年間で縮小・軽量化するのはものすごい技術進歩である。 携帯電話の販売が自由化されたのは1994年のこと。 それまではレンタルのみで販売はされていなかった。携帯電話が普及し始めるのはそれ以降のこと。
 学生に携帯電話(PHSも含め)が普及し始めたのは 女子中高生のポケットベル(以下ポケベル)のブームを受けて 1996年(96年はPHS。携帯電話は97年)に文字送信サービス、所謂メール機能が携帯電話に付いてからだ。 初期はやはりポケベルが猛威を振るっていたがその後、通話も出来、手頃な料金で利用できるPHSに流行は移行。 メール機能も初期は同機種間しか出来なかったのが 携帯電話会社が同じなら利用可能、PHS間なら利用可能(携帯電話への送信は不可)と どんどん進歩し、最終的にはeメール機能が搭載されPCからeメール機能を搭載した全てのPHS・携帯電話まで利用可能と 送受信端末を気にせず利用できるようになった。 それ以外でも着信メロディのカスタマイズ文字情報サービスなど、 コミュニケーションで役に立つ機能以外にも「遊べる・役に立つ」機能が日々追加されていった。 現在の「多機能」が携帯電話の売りになる傾向が出来上がってきたのはこの頃からだと予想できる。
 eメール機能がPHSに普及していくころには携帯電話も同じようにメール機能が充実していき 、通話技術も向上、料金もある程度低額で利用できるようになった。 学生利用者のPHSから携帯電話への移行が始まる。メール機能以外では1999年にドコモがiモードサービスを開始。 携帯電話でWeb閲覧が可能になった。その後、カメラ機能JAVAアプリ機能も搭載され、益々携帯電話は多機能化を進めていく。 (カメラ機能・JAVAアプリ機能については以下の項で述べる。)

表2−1.携帯電話の歴史
1979 自動車電話(移動電話)が登場。これが携帯電話のルーツ。
1985 「ショルダーフォン」レンタル開始。
1987 現在のような形の携帯電話登場。
1994 携帯電話販売自由化。それより前はレンタルのみ。
1996 PHS文字送信サービス開始。
1997 携帯電話文字送信サービス開始。
1999 ドコモが「iモード」開始。Web閲覧可能になる。

 
 90年代後半はまさにポケットベルから始まりPHS、携帯電話の目覚しい発展と衰退・普及の嵐だった。21世紀になった現在では国民の62%もの人が携帯電話を持っている(2002年末統計より)。手のひらにすっぽり収まる高性能コミュニケーション端末は特に若者の間では生活から切り離せないものになっている。
 ただ、この流れを見て少し疑問に思うのは「技術革新が先かユーザーのユーズに答えるのが先か」という点である。「技術革新=ユーザーのユーズに答える」部分は当然ながらある。しかし、ユーザーを虜にしようと思うあまり多機能部分の開発に先走り過ぎている面も否めない。しかしだからといって多機能部分を無視すると業績が伸びない。ユーザーは携帯電話に何を求めているのだろうか。通信機能か。はたまた遊びか。


2.2 モバイルカメラ機能について

 2000年9月にauが外付けモバイルカメラを発売、2000年11月にJ-フォン(現在vodafone)がカメラ付き携帯電話を発売した。今誰もが知っている「写メール」という名称がJ-フォンのカメラ(付き携帯電話)に付いたのが2001年6月のこと。藤原紀香と酒井若菜を起用したキャンペーンが成功し「写メール」の認知度は上昇。業界シェアを広げていった。ドコモは2001年9月に発売した「FOMA」に初めてモバイルカメラを搭載(FOMAの場合、TV電話用カメラで静止画が撮れると言ったほうが正しい)。FOMAとは別に「iショット」という名称でカメラ付き携帯電話を発売・静止画メールサービスを開始したのは2002年6月になってからだ。ちなみに、auがカメラ付き携帯電話を発売したのは2002年8月。同時に「ムービーメール(動画)」も撮れる携帯電話も発売された。
 2002年がカメラ付き携帯電話普及の年と例えるなら2003年はメガピクセルカメラ普及年と例えるのがいいだろう。ドコモ、au、J−フォンがほぼ同時にメガピクセルカメラを発表。年末には200万画素の機種も出た。カメラの進化はとどまることを知らない。
メガピクセルカメラが登場したことにより、デジタルカメラに引けを取らないほどの画像が撮れるようになった携帯電話。カメラ付き携帯電話の普及により携帯電話に似た片手で撮れるデジタルカメラが発売されたほどである。中には携帯電話を新規で契約した後すぐに解約し、通信機器として使わずデジタルカメラ代わりに使う人も出てきたほどである。
 しかし、実際にカメラ付き携帯電話を持っている人はそこまで頻繁にカメラ機能を使用していないように思える。とある統計ではデジタルカメラとカメラ付き携帯電話の棲み分けはしっかりできているという結果がでている。ユーザーにとってカメラ付き携帯電話とはどういった位置付けにあるのだろうか。


2.3 JAVAアプリ機能について

 常駐ソフトやゲームなどが楽しめるJAVAアプリ(以下「アプリ」)。アプリが一番初めに登場したのは2001年1月、ドコモのiアプリである。J−フォンは2002年6月、auは2002年7月に登場している。また、各携帯電話会社共に2、3回ヴァージョンアップしており、今では携帯ゲーム機に引けを取らないくらい成長している。
実際、電車内など暇つぶしに携帯電話でゲームをする人をよく見かける。ある調査では暇つぶしに使う以外では寝る前にゲームをすることが多いという結果も出ていた。
 カメラ機能と比べるとインパクトに欠けるが着実に高性能化の道を歩んでいくアプリ機能。電話機としてのコミュニケーションツールとしての機能に入らないが今となっては携帯電話の多機能になくてはならない機能になっている。

表2−2.携帯アプリの歴史
ドコモ

2001.1(10K)→2002.5(30K、スクラッチパッド※150K)→2003.5(30K、スクラッチパッド200K、名称も「iアプリDX」へ)

au

2001.7(JAVA50K)→2002.1(BREW※250K、プリインストールのみ)→2003.1(BREW50K、ダウンロード可能)

J−フォン

2001.6(50K)→2002.1(100K)→2003.5(256K)

※1スクラッチパッド(Scratchpad):携帯電話上にアプリケーションで使用する永続データを保存するための記憶領域。
※2BREW (Binary Runtime Environment for Wireless):JAVAに変わる新しいアプリケーションプラットホーム。


2.4 ロジャーズの普及学

 携帯電話産業だけでなく、様々なものの普及を考えていくうえで非常に役立つのがE.M.ロジャーズのイノベーション普及学である。イノベーションとは普及対象になる物や習慣のことと考えていただければいいだろう。(この論文の場合「携帯電話」)ここでは論議に必要な部分だけを掻い摘んで紹介する。
普及は
「革新的採用者(イノベーター)」
「初期少数採用者(オピニオン・リーダー)」
「前期多数採用者」
「後期多数採用者」
「採用遅滞者」

の5パターンの人々で構成されている。

表2−3.ロジャーズの普及学

革新的採用者
(イノベーター)2.5%

一番初めにイノベーションを採用する人。
新しいものはまず使ってみたい「新モノ好き」。

初期少数採用者
(オピニオン・リーダー) 13.5%

イノベーターの次に早々にイノベーションを採用する人で、
社会(以下の層など)に影響をもたらす層。

初期多数採用者 34%

オピニオン・リーダーの影響を受けて採用を決める人々。

後期多数採用者  34%

初期多数採用者以前の層など
たくさんの人が採用してから採用し始める人々。

採用遅滞者(伝統主義者) 16%

最後に採用する人

  
 例えば、現在の学生の携帯電話普及率はほぼ100%(昨年の携帯電話調査で所有率は100%だった。今回の調査はそのため携帯電話所持が前提になっている。)のため、現在携帯電話を所有していない学生や携帯電話を持ち始めたばかり(例:1年未満)の学生は「採用遅滞者」に位置するわけだ。また、上記のとおり、これは携帯電話の普及のみに当てはまるものではなく、携帯電話使用法や情報活用法にもあてはまると思われる。



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