アメリカ合衆国(以下、「アメリカ」)は北米大陸中央に位置し、連邦区および50の州から構成される国です。国土の総面積は985万平方キロメートル、総人口は世界第3位の3億2700万人です。大西洋沿岸に位置する13の植民地をきっかけに建国がはじまりました。1776年7月4日のアメリカ独立宣言の後、1787年9月に、現在のアメリカ合衆国憲法が起草され、その後、唯一の内戦である南北戦争(1861-65)の結果、奴隷制が廃止されます。
19世紀末までに、その国土を太平洋側にまで拡大し、経済成長を遂げました。米西戦争や第一次世界大戦をとおして軍事大国となり、第二次世界大戦では連合国として参戦し、戦勝国となりました。今や、超大国となり、経済大国でもあるアメリカは、世界にさまざまな影響力を及ぼしています。
現ファーストレディーのジル・バイデン氏は、元教師です。ホワイトハウスでも教育への関心が高まっており、コロナ禍において、学校教育の在り方も問われています。学校再開、オンライン授業の促進等、新しい課題にアメリカがどう向き合っていくのか、考えていく必要があります。近隣諸国やアジア地域からの移民など、スペイン語や中国語の話者人口も増え、もはや英語だけでは、多様な民族・文化を背景に持つ「国民」間の相互理解が難しくなってきているのも現状です。こうした多様性を内包する国であるため、教育制度も州や郡によって異なりますが、今回はメリーランド州チャールズ郡の教育制度に焦点を当てつつ、アメリカ全体にも目配せをしていきます。この教科書展を機会に、「近くて遠い国」ともいえるアメリカの教育について考え、日本との関係や歴史についても熟考する機会になればと思います。
今回の教科書展の解説は、本学教育学部・福田スティーブ利久先生にお願いしました。
(新型コロナウイルス感染防止のため、教科書の実物展示は行いません。)
文教大学教育研究所(2021年10月)
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大リーグMVPを大谷選手にとってほしい(10月13日現在)。大谷選手の情報は毎日入り、国内の報道では、日本人初のMVPを獲得できると誰もが思うだろう。確かに、アメリカでも「20世紀前半以来の二刀流怪物」や「今後の野球界を変える名選手」と報道され、有力視されている選手でもある。一方、反対意見もないわけでもない。「チームの勝率は低く」・「プレイオフ進出はない」など、シーズン中盤から議論され、チームの成績に対するプレッシャーがない大谷選手は他の選手と比べて個人成績に集中できるという意見もある。このように日米双方の見解を知ると大リーグの理解が深まり、面白い!
教育関連のニュースも同じだ。国内だけの情報だとアメリカ教育に関する情報は偏っている。どっちが良い悪いではなく、どっちも同じような課題を抱えていることを日本人に理解してほしい、すると面白みが増し、日本が抱えている教育問題を解決するアイディアが現れるかもしれない。両国の子どもが学ぶ内容や方法、人材育成像などにさほど違いはない。確かに、日本と比較するとアメリカの面積と人口はケタ違い。そのため、一つ一つの課題がより大きく感じられる。国内の教育事情を深堀すると(例 貧困から生まれる教育格差)同じような課題は必ず見つかる。アメリカの場合、ステークホルダーが多いため、課題の解決策もより多く、より早い!偏ったままの見方をしてしまうと面白くもないし、マイナス面や異なる面ばかりが目立つ。今回は、アメリカの教育制度をより深く知るために描いたつもりである。各パネルから得た知識をもって、今後、報道されるアメリカの教育に関するニュースなどの情報を観てほしい。
日本とアメリカの教育を語る際、入口としてまず教育課程が任されている母体を知る必要がある。アメリカはそれぞれの州、日本は国に任さている。従って、各州を細かく調べると様々な制度があり、好きな地域から調べると面白い(日本もそうだが…)。まず、下図に示されているアメリカの大まかな教育制度である。幼稚園は5歳、小学校は6歳からなど日本と非常に似ている。これ以外に、基本的なことを以下で述べる。ご覧になってからその各州の詳細を調べることをおススメしたい。
1) ESEA法 「初等中等教育法」
2) A Nation at Risk 「危機に立つ国家」
3) NCLB 法「どの子も置き去りにしない法」
4) RTTT 「頂点への競争」とESSA法「すべての生徒が成功する」
5) CSSS 「共通カリキュラム」
6) Charter School 「特別認可小中学校」
7) School Voucher 「学校バウチャー」
8) ESEA法からESSA法まで
9) Educational Freedom 「教育の自由」
10) Lessons Learned 「ブッシュJr.とオバマ政権の教育改革からの教訓」
11)Educational Freedom政策 「教育の自由」
12) 保守派フィン教育副次官補(レーガン政権)からの見解
13) リベラル派からのメッセージ
14) 新バイデン政権に教育現場が何を期待するか