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去る11月29日の土曜日、総勢5名で郷土史家 平野雅道さんのご案内で東海道藤沢宿周辺の散策にでかけました。冷たい雨が黄金色のイチョウや朱赤に染まった楓を一層あざやかに濡らす晩秋でした。それがかえって静寂で、歴史の中に息づいた人々のこえを聞く格別な場面ともなりました。


宿場に点在する土蔵

白旗神社

庚申塔群

簡単に当日のコースや史跡の概略などをご紹介いたします。

まずたずねたのは、白旗神社庚申塔群。当神社の御祭神は寒川比古命(さむかわひこのみこと)と源義経で、平泉で自害した義経の首を腰越の浜で実検し、神社にはその首級が弔われ、祭神となった由緒があるところ。それにまつわる平野さんのお話の中で、宮城県栗駒町の義経の遺骸の胴体と遠く離れてしまった首を合わせて供養したというロマンあふれる逸話を供養塔脇でうかがいました。
続いて、マンションのかげにひっそりとたたずむ源義経の首洗い井戸石碑のあとへ。

交通量の多い国道沿いの藤沢宿のふんいきが今も感じられる土蔵や店舗を通りすぎます。古い建物はなぜかとても心ひかれる思いがします。「紙屋」さんの古い看板を目にし、おもわず足を止めました。偶然、おいでになった家主様が店舗やおすまいを案内してくださるという好運にもめぐまれました。築百年という暮らしとそこに息づいた昔が彷彿とし、人のこころを味わいました。


石碑のあと

交通量の多い国道沿い

「紙屋」さん

この散策で特に印象に残ったのは、永勝寺内の宿場のはたごで働いた「飯盛女」の三十九基の墓。主人の基を中心にとりまくように並ぶたくさんの墓。朽ちかけてくずれそうな女たちの墓におもわず手をあわせたくなるような生のドラマをみたおもいがしました。

遊行寺入り口の黒門付近、左手墓地にある板割りの浅太郎の墓も興味深いものがありました。浅太郎は講談、浪曲などでおなじみの義侠「国定忠治」の子分で、社会の底辺に生きるアウトローな人物像がよみがえりました。


「飯盛女」の三十九基の墓

游行寺入り口の黒門付近

ふくろう展示館

荘厳寺、常光寺をまわり、終着は、福本和夫氏のふくろうのコレクションを娘の逸子さんが守っていらっしゃる「ふくろう展示館」。江の島が見渡せる高台の美しい自然の中でお茶をいただきながら、数々のふくろうの品々にほっとひと息をつきました。

平野さんの楽しく、ていねいなご案内で、歴史がとても身近に感じられ、そこに息づいている人間たちの様々なおもいにもふれることができ、実に充実した数時間でした。
再び、機会をつくることを平野さんとお約束し、散策は無事終了しました。

文芸科 15回生 実川恵子(旧姓 山之内)

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