ー 50周年記念特別対談 ー小中高校のPTAと父母教
近年、小中高校のPTA運営が難しくなってきていると言われています。本会でも、支部運営の難しさや支部再編を求める声が聞こえてきています。
全国規模の活動という面白さ
私は神奈川県支部の支部長も務めましたが、支部長さんは責任を抱えていますから大変だと思います。課題の一つに、現役会員と賛助会員の比率の適正性があるように思います。賛助会員の方は父母教にご理解があり、活動自体の経験が豊富でその有意義さも感じておられ心強い存在です。しかし、現役学生の親御さんとは、お子さんの就職環境をめぐる感覚に差があると感じることが多々あることも事実です。やはり「子の社会的自立に向けて、現役が核となって主体的に働き、賛助が経験をもって支援する」という構図が望ましいのではないかと思います。そのために有効に働く比率というのがあるのかもしれないと思っていました。また、個人的なことになりますが、支部長を引き受けたおかげで全国規模で多くの方と知り合うことができました。支部長や会長を退いた今でも繋がりが続いていることは、私の貴重な財産になっています。支部長になった時は必死ですから、喜びなどを感じる暇はありませんでしたが、後になってたくさんの良い遺物が出てきたのは確かです。大学の先生と、時に冗談を言い合いながら、今でも親しく話ができるのもそうだと思います。
長い歴史の中では、父母教にもいろんな浮き沈みがあると思います。私の経験の中でも、地方の支部の活性化を図るためにブロック化するという話もありました。しかし、ブロック化しようとしても解決できない大変な課題がありました。距離的な問題です。旅費や時間の問題をどう克服するかといった課題がどうしても残ってしまう。支部のあり方は、地域の歴史や文化とかかわりが深い。福島県に3つの支部があるのは、地域の文化的な区分けに基づいていますし、北海道のように1県で1支部というところもあります。ブロック化や統合化などの議論もあるかもしれませんが、慎重な検討が必要で、安易に統合するとかえって活動の停滞、父母教の減衰を招く恐れもあるのではないかと思います。それに加えて、地方でやる行事に関しては、多少無理してもやめない方がいいと思いますね。要するに、会員になってくださる方は父母教に関心がある方、熱心な方が多いんですけども、入会されない方にどう父母教の存在をアピールするかというと、入学式や卒業式もそうですが、地方での生きた広報ができれば全然違うと思うわけです。
私は地元の小学校とかかわりを持っていますが、PTAを解散しました。それで、その代わりになるものを立ち上げて、外部委託で運営しています。これが実態です。今まで役割分担などで運営していたのですが、その感覚がなくなりました。ですから、学年や学校段階が上がれば、推して知るべしというところなのかもしれません。
しかし、大学の『父母教』は高校までのPTAとはスケールが違います。活動規模が全国ですから、面白さの種類も違います。例えば、この会に関わって何らかの活動してみると、活動した方は高校までとは異なる全国規模の活動という面白さを味わうことになり、面白さの中身が全く違うことを実感される。それぞれの活動を通して、勉強などもし、人との繋がりもできる、しかも全国規模で。この辺が高校までのPTAとは別次元の組織だということです。単なる組織としてのPTAではなく、活動そのものに夢があり、次元の広がる面白さや有意義さがある。学生へのサービスにとどまらず、活動を通じて親自身が目標を発見し、自己実現していく「自己開拓」の場が父母教にあります。
本当にそうですね。支部長や会長は責任が重く大変ですが、退任後も全国の方々と繋がりが続いていることは一生の財産です。普通に生活していたら出会えない大学の先生方と冗談を言い合えるような関係になれたのも、この活動があったからこその貴重な経験でした。

教員側にある大きなメリット
教員の立場からも、父母教に関わるメリットは絶大です。私は30代半ばで文教大学の教員になったんですけども、私を含めて若い頃というのは往々にして研究者の意識が強いような気がします。小中校の先生方は教育にかかわっているという意識を強く持っていますからPTAとの関わりもある。しかし大学の教員は、意識として研究が優先するところがあると思われ、教育やいわゆるPTA活動よりも研究ができるから大学の教員になるという意識が強いのではないでしょうか。教育ということを前面に出して大学の教員になるという人は、あまりいないような気がします。私も若い頃はそうでした。しかしある支部に派遣されて、皆さんの前で準備が十分でなかった挨拶をしたところ、親御さん(お父さん?)から「これからも子供のことを頼みます。」と大きな声がかかり、同時にお母様からも「よろしくお願いします」と聞こえてきました。その心から発せられた言葉に「親というのはこんなに子どものことを思っているのか」と、ハッとさせられた記憶があります。大学教員になったということは、親御さんから預かっている若い人たちを育てる義務があると、頭では分かっていたつもりではあっても、実際の言葉に触れて身に深くしみ込んだ体験でした。そういう意味において、教員の方も父母教に関わるということは大きなメリットがあると思います。親御さんの思いに触れることは、学生を「育てる」義務を再認識させてくれます。教育の質を高めることにもつながることですから、今後も支部総会などへの教職員派遣は大切にしてほしいですね。
保護者側からしても、大学の先生と我が子についての話をすることができる、たとえ直接子供と接していない先生であっても、子どもが生活している空間を共にしている先生から話を聞けることは大きな安心感に繋がります。支部総会なり研修会に、先生方にどんどん参加していただき、実際に支部の会員の親御さんと話をしてほしいと思いますね。大学の近くの支部ですと、自分たちの生活圏に大学があり、先生から個人的にも、キャリア支援課で就職のことも、すぐに聞くことができる環境にありますが、地方ですとそうはいきません。逆に、会場まで教職員の方々に来ていただけるわけですから、そのメリットは大きいと思います。