文教大学大学院 人間科学研究科

専任教員による幅広い授業カリキュラム


臨床心理学特論Ⅰ
<鍛冶 美幸>

臨床心理学的援助を実践するための共通の基盤となる障害論及びその援助方法について学ぶ。特に臨床実践において心理療法、心理査定の対象となるクライエントについて、DSM-5で採用されている主要な診断カテゴリーに分類し、その診断および治療について必要な知識と理解を深め、臨床心理学的視点から検討を行う。授業は各回ともあらかじめ対象となる診断を示し、担当となる受講者による報告をもとにその特徴や代表的な援助方法を確認する。また事例を素材としたディスカッションを通して、アセスメントや治療のプロセスについて考察を深めることを目指す。


臨床心理学特論Ⅱ
<三浦 文子>

この講義では、人間性心理学を中心とした代表的な理論家・実践家の生涯、理論、方法について学ぶことを通して、心理臨床実践を行う上で必要な人間理解を深めることを目指す。また、人間性心理学的アプローチの事例についても取り上げ、ディスカッションを通して理論と実践をつないで習得することを目指す。


臨床心理面接特論Ⅰ(心理支援に関する理論と実践)
<田中 志帆>

対象関係論に基づく心理療法(カウンセリング)とその他の学派の治療の目的や焦点のあて方について学ぶ。治療プロセスで起こること、さまざま出会う課題に臨機応変に対応するための基軸を育てることを目指す。実際の臨床実践においては、自身の感性を研ぎ澄ましつつ、アセスメントをした上で治療の目的と契約の意味を考慮し、対応することが求められる。さまざまな臨床場面でのロールプレイや精神力動的定式化を実際に行いつつ、実践力を高める。


臨床心理面接特論Ⅱ
<小林 孝雄>

対人援助法としての面接(カウンセリング、心理療法)について、クライアント中心療法を軸にしつつ、認知行動療法や精神力動論、統合的心理療法などの代表的アプローチにおいても基本となる態度・技法と理解のし方を学ぶ。ロールプレイなどの体験学習を通じた、体験的理解を目指す。また、ケースの見立てや面接プロセスに関する考察ができるような理解の枠組みを身につけることも目的とする。


臨床心理査定演習Ⅰ(心理的アセスメントに関する理論と実践)
<水野 康弘>

クライエントのためになる心理支援を実現するために必要不可欠な心理的アセスメントについて学ぶ。つまり、面接・観察・心理検査を駆使して、クライエント全体を包括的に理解し、個々のクライエントに合わせた支援計画を立てることができることを目指す。具体的には、インテーク面接、バウムテスト・HTPPテスト・風景構成法などの描画法の演習、架空事例を用いたアセスメントに関するディスカッションを通して、体験的・実践的に学習する。


臨床心理査定演習Ⅱ
<水野 康弘>

心理的アセスメントの一連の過程を系統立てて実施できることを目指す。その中でも、特に心理検査バッテリーの設定・実施・統合的な解釈、アセスメント結果を統合して支援計画を立てる、アセスメント結果をクライエントや関係者と共有して支援に還元することを学ぶ。具体的には、ウェクスラー式知能検査およびロールシャッハテストの演習、架空事例を用いた心理検査バッテリーの結果を踏まえたアセスメントに関するディスカッション、アセスメント結果のフィードバック面接のロールプレイなどを通して、体験的・実践的に学習する。


臨床心理基礎実習
<名尾 典子・田中 志帆>

前半では、アイビイのマイクロ・カウンセリングのビデオの視聴・解説・ロールプレイを通して、臨床心理面接の基礎的技法を体験的に習得する。中間では、面接のプロセス(インテーク面接、面接初期・中期の問題、終結)、記録のとり方、事例報告の形式、倫理を学習する。後半では、本格的な面接に移行する際の中間的な面接訓練法として、試行カウンセリングを行い、事例検討会を通して、事例の見立てやケース・マネジメントについて体験的に習得する。


臨床心理実習Ⅰ(心理実践実習1~6)
<布柴 靖枝・他13名>

学外および学内の実習を通して、被支援者の見立てと支援の方法を多職種連携も含めて実践的に学ぶ。学外実習は、医療分野を必須に三分野以上で実習を行い、学内実習は、付属臨床相談研究所で、個人面接、プレイセラピー、夫婦・家族面接、心理検査、インテーク陪席の面接実習を行う。そして、ケースカンファレンス・アフターカンファレンス・個人およびグループスーパーヴィジョンをあわせて受けることで倫理的配慮や知識と技能を総合的に学ぶ。尚、公認心理師は450時間以上(臨床心理士のみは90時間以上)の実習を行う。


臨床心理実習Ⅱ
<布柴 靖枝・他3名>

付属臨床相談研究所で担当しているケースの事例を記録にまとめ、個別スーパーヴィジョンを受けることを通して、実践的に心理支援の方法を習得する。また、理論と実践を統合し、ケースを見立て、適切な支援ができることを目指す。


心理学研究法特論
<岡田 斉>

心理学研究を行うに当たって必要な方法論の再確認とより深い理解がこの授業の目的である。放送大学大学院のテキスト「臨床心理学研究法特論」を素材として用い、心理学者が陥りやすいとされる盲点について講じることから出発し、最近話題となっている心理学研究法などを幅広く話題として取り上げ検討・討論する。


臨床心理学研究法演習
<高尾 浩幸>

臨床心理学研究において近年採用されることが多くなってきた質的研究法について、その基本的考え方と技法を理解する。質的研究法のうち特に、クラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)を取り上げる。実際にデータ分析に取り組み、分析手順を理解する。また、データ収集法として、半構造化面接の方法を取りあげる。半構造化面接にも、方法としての考え方と技法がある。分析に必要なデータを収集するには、訓練(練習)が必要である。面接および言語データ分析の訓練は、心理臨床実践に寄与する部分が大きいので、研究と臨床の橋渡しについても検討する。


教育心理学特論(教育分野に関する理論と支援の展開)
<谷島 弘仁>

学校をはじめとする教育分野においては、問題を抱えた児童生徒への当事者支援だけではなく、保護者、教師、学校組織、教育委員会等への関係者支援が求められる。また、医療機関や児童相談所等へのリファーが必要となることもあり、コーディネーターとしての役割を求められることも多い。そのため、授業においては、以下の点を目的として演習を取り入れながら講義を行う。①学校や教育委員会の役割と機能について理解する。②適応指導教室や教育センター、フリースクール等の機能と現状について理解する。③教育分野において必要とされるアセスメントや介入の理論と方法について理解する。④関係者支援を行う上で必要とされるコンサルテーション、コラボレーション、コーディネーションの理論と方法について理解し、習得する。


心の健康教育に関する理論と実践
<吉田 悟>

2012年の世界精神保健デーにおいて、うつ病は最重要課題として取り上げられた。うつ病は2004年の世界疾病負担で第3位となっているが、2030年には第1位になると予測されている。このことは、世界中の国々において、うつ病を含む感情問題が、精神保健領域のみならず、健康領域全般における最重要問題となりつつあることを意味する。そして、感情問題の予防と治療には、従来から、うつ病を含む感情問題全般にエビデンスがある認知行動療法の活用が重要と考えられてきた。そこで、本授業では、感情問題の予防について、特に認知行動療法に基づく心理教育に焦点をあてて論じる。


人格心理学特論
<田中 志帆>

本講義では、①精神分析理論をベースにした人格理解、アセスメントを行うことができるような知識の習得を目指す。②分離体験をする幼児観察のVTRから、対象関係論的視点で、人格の成り立ちや子どもの心の変容を理解する。③心理検査からその人となりを理解する。④パトグラフィー(病跡学)を試みる、といった内容によって臨床心理実践におけるパーソナリティ理解の力を高めることを目指す。


イメージ心理学特論
<岡田 斉・鍛冶 美幸>

この授業は2人によるオムニバスの形式となる。イメージは臨床心理学を理解・実践する上で避けては通れない現象である。イメージは内的な心的体験であるがそれを表出する身体との関係性なしには十分な理解は得られないであろう。また臨床で実践を視野に入れるなら、理論的な講義だけではなく実際に体験することが求められる。そこで、本授業では前半7回程度は受講者が興味を持ったイメージを用いた心理療法や心理アセスメントを調べて発表し、実際に受講者同士で実施・体験する。後半の8回程度はイメージと身体との関連性を体験も含めて理解してもらうことを目的としてダンスセラピーの講義と実践を行う。


犯罪心理学特論(司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開)
<須藤 明>

少年審判と刑事事件における手続きや理念の違いなど司法制度の基礎的な理解を図るとともに、この領域で働く専門職の役割を知る。また、犯罪や非行に至る要因や更生に関する理論と援助技法の基礎を学ぶ。非行・犯罪臨床は、更生を目的とした心理臨床的援助の総称であり、臨床心理学、精神医学、社会学等の人間行動科学の方法を用いて実践されている。昨今、刑事事件においては、応報的な罰だけではなく、犯罪に至った人の社会的躓き、発達上の課題その他を踏まえて適切な援助をするといった治療的司法が世界的な流れになっており、その中で心理専門職が果たしうる役割についても考えていく。


産業・労働分野に関する理論と支援の展開
<幸田 達郎>

産業・労働分野の理論(経営学の基本と産業・組織心理学)および労働分野特有の問題点を考える。
産業場面で発生する心理的問題の前提となる企業の論理を検討するとともに、キャリアと能力開発といった問題についても考えていく。
問題が発生する背景を考え、後半では、ケース・スタディ形式でディスカッションを行う。


家族心理学特論(家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践)
<布柴 靖枝>

本講では、家族心理学、集団心理学の視点から、システム論を基礎とした家族・集団・地域社会における関係性に焦点を当てた心理支援のありかたについて学ぶ。また、現代社会における家族・社会問題にも注目し、家族のライフサイクル、ジェンダー、多文化という視点も包括した支援の在り方についても学ぶ。


人間関係と法
<徳永 光>

法は社会で生じた紛争を解決する規範(ルール)である。また、人々の行動の指針となることもある。その意味で、法は人間関係を反映しているといってよい。この授業では、契約関係と法、夫婦関係と法、親子関係と法、高齢者と法、裁判員裁判などの法的紛争事例について検討することを通じて、法が人間関係をどのようなものと捉え、どのようなものとしてそれを実現しようとしているのか、人間関係という視点から、「法とは何か」について、受講者と一緒に考えてみたい。


精神医学特論(保健医療分野に関する理論と支援の展開)
<小原 千郷・井野 敬子・丹羽 まどか>

保健医療分野に関わる公認心理師の実践に必要な知識とスキルを学ぶ。心理職として医療現場で働くためには、最低限の精神医学の知識を身に着けることが必須である。医療現場においては、精神科医を含む医師、看護師、栄養士、言語聴覚士等の医療職との協働作業が求められる。医学用語と診断はその共通言語であり、精神医学の知識があって初めて話が噛み合い、医療現場以外で働く場合も、医療とのよい連携のために共通言語の習得が必要である。この授業では公認心理師に必要な精神医学的知識を系統的に提供する。


福祉分野に関する理論と支援の展開
<岡田 斉>

福祉分野における公認心理師の実践について理解することがこの授業のねらいである。社会福祉の領域を簡単に概観した後に、発達障がい、障がい児者、高齢者、虐待、DV、等のケースに公認心理師としてどうかかわるか、事例論文等をとりあげ演習形式で受講者とディスカッションをしながら読み理解を深めていく予定である。


異常心理学特論
<高尾 浩幸>

心理臨床において、重要な柱の一つである異常心理について検討を加える。具体的な事例を取り上げ、発達論的、家族論的、生理論的、疾病論的、人格論的、力動論的、社会論的、文化論的な観点から、多角的に考察を加えることで、臨床的な洞察力の向上を目指したい。


神経心理学特論
<仁木 千晴>

神経心理学の神経とは、脳のことである。脳が損傷された時にどのような精神症状が現れるのか、認知、記憶、遂行機能、視知覚、感情など、その働きごとに実際に症例を取り上げ、人の心の働きについて学んでいく。基本的な脳の解剖学的知識から実際の臨床における脳画像の見方、及び症状の見方について学び、最終的には症例が示す精神症状について、自ら見立てる力を養っていく。また、すべての心のプロセスと関連する脳部位が明らかになっている訳ではない。これらを明らかにすべく研究への発展へと繋げることができる考え方についても学んでいきたい。


遊戯療法特論
<名尾 典子>

本授業では、子どもの心理療法および親面接についての理論を学び、実践に役立つ技法を身につけることを目的とする。子どもの心理療法として代表的な遊戯療法や関連する心理療法(箱庭療法・芸術療法他)や親面接の理論と技法をロールプレイや体験学習、事例の検討などを通して体得する。そのため、受講者には、子どもや子育てを巡る社会問題等についても自主的に学び考える姿勢を持つとともに授業には積極的に参加する態度が求められる。


精神分析特論
<高尾 浩幸>

精神分析とは、人間の心を、意識だけでなく無意識の世界を含むものとして探求する学問である。その対象領域は、異常心理に限定されることなく、日常的な人間経験を含んでいる。つまり、日常性と異常性を連続したものとして捉えるところに精神分析の特徴がある。このことから、精神分析を学ぶ過程において、自分自身の日常体験と分析概念を照らし合わせる経験が得られやすい。そこで、分析的なテキストを読み解くことによって、「自分の体験」と「学術用語」をつなぐ経験を実感し、人間経験に即した心理臨床の理解を深めたい。


家族療法特論
<布柴 靖枝>

家族療法の基礎理論となる家族システム理論、および家族療法各学派の理論を学び、家族の構造、機能、発達面のアセスメントをして家族全体を支援する家族療法の実際について学ぶ。ロールプレイなどの実習も多く取り入れ、理論と実践を統合的に習得することを目的とする。


認知行動療法特論
<小原 千郷>

認知行動療法は、ものごとの捉え方(認知)や行動に変化を促すことで、気分や身体症状を改善し、日常生活への適応を改善する心理療法である。実際の臨床では、ただ「認知」を変えるのではなく、クライエントの現実の問題を解決し、適応を高めるための戦略的な支援が必要とされる。本授業では、ロールプレイ・個人ワーク・ディスカッション・グループ発表を随時取り入れ、認知行動療法の知識と技法を実践的に学ぶ。


心理療法特論

2023年度非開講


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