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阿野研究室

大きくいうと英語教育学と応用言語学です。英語教育学とは、どのように英語指導をしていくと学習者が英語を身につけられるかといったものです。もう一つの応用言語学とは、様々な言語の現象、例えば文法や意味、発音、音声等を応用するというものです。つまり様々な人が理論的な研究をしていますが、その研究を教育に応用する研究です。応用言語学の大きな枠の中に英語教育学があるといったイメージです。言語学の中には様々な言語があるので、その中の一つが英語なのです。私が今一番していることは、自分が研究していることを形に移すということです。一番大きいのは中学校の検定教科書「NEW HORIZON」ですね。皆さんは、教科書はあるもので勉強していると思いますが、教科書は人が作っているものなのです。どのような教科書を作れば、学ぶ人が分かりやすいか・・・そのようなことを常に考え、最終的には結論を出して作っています。例えば、文法の学習順や配列、be動詞を先に教えるか一般動詞を先に教えるか等を、様々な研究者の研究成果から考えて作っています。そして、その中でどのような題材を載せるかも重要です。理科や数学は、題材はある程度限られますよね。ただ英語は違っていて、例えば、歴史上のエジソンを用いるか、テニスの錦織圭選手を題材として用いるか、生徒がどちらに興味を持つかを考えると、恐らく錦織選手ですよね。このようにこの文法事項にはどの題材を絡めればよいかというパズル的なことを考えて作ることに時間を割いています。あとはNHKで持っている番組ですね。どのような放送を流していけば、ラジオを聞いたり、テレビを見たりして勉強している人達がより興味を持つか、毎日毎日聞いている人たちがどのような力をつけられるか。あとは限られた時間内でどのような説明をすればわかるか、どのような番組を作ればより興味をもってくれるかということを考えることに、圧倒的に時間を使っています。そして私が本来もっとしなければならないのは、英語の教員養成・教員研修です。今私は、大学での教員養成に加えて、様々な都道府県の英語の教員研修を行っています。そこではこういう風に授業を展開すると、こういった力が身につきますということを、実例を出して伝えたり、その効果がでている英語の授業を分析して、伝えていくという仕事もあります。つまり、英語の教授法や学習法を、教材や指導者等を含めて考え、教員養成・教員研修をしています。

では今伺いました阿野先生の研究内容と国際学との接点はどのように考えればよいでしょうか。

国際学とはとても広い分野ですよね。そこで英語は絶対にどこにでも関わってくるものです。国際学で研究していることを吸収していく時、あるいは発信していく時に非常に重要な手段になっていると思います。今大学院生は、先行研究をたくさん読んで研究を進めていると思いますが、次に同じようなことをしていく人にどのように伝えていくか、それはeducationに大きく関わっているのです。その手段に言葉では英語が入ります。教科書にどのようなコンテンツを加えれば、英語力が伸びるかという研究と同時に、国際学の様々な分野に興味を持ち、そして興味が広まり、将来を考えるきっかけになるかなど、educationがブリッジングをする大切な役割を担っていると思います。国際学の中に様々な細かい分野があって、それをマッチングさせていくような、そういったものが、英語教育のeducationという分野なのかなと考えています。

決定的な違いは、まず人数ですよね。国際学部は少人数と言っていますが、大学院は少人数どころではない少なさです。ただ、これは大学院に来る価値があることだと思っています。大学では自分が好きな分野を学んでいますが、大学院はもっと狭い分野を追いかけていると思います。そうすると違う視点が入らなくなってしまう可能性があるのかなと思っています。まさしく国際学は、授業に行くと、先生によって全く違うことを言っていますよね。ただそれでよいと考えています。同じことだけをずうーっと行っていると、ちょっとしたことや違う視点、他の考えに気づけなくなりがちだからです。例えば、研究分野ごとに、この研究分野ではこの研究手法が常識だと言われていることがあると思いますが、そこに少し違う研究分野の研究手法が入ると、新しい所にいけるということがあるからです。そういったきっかけを与えたいと思っています。それは授業でもそうですし、皆さんが必ず体験させられる「中間報告会」でもそうです。自分が指導してもらっている専門の先生からの指導は、そういうものだとしてすぐに受け入れていると思いますが、中間報告会では他分野の先生方から自分が考えてもみなかったことを言われます。ただ、それでよいのです。その指摘があることはなかなか他ではないと思いますし、違う視点を与えられることで視野の広い研究ができると思います。文教大学大学院は国際学のある分野にピンポイントで詳しい先生がたくさんいらっしゃるので、それはすごく魅力ですよね。

これが苦しいところです。NHKラジオ講座の『基礎英語』をやっていた8年間は、それまで自分がやってきたことを出し続けているだけで、全く研究ができていませんでした。学会でも新しい見地を発表するというよりは、自分が今までしてきた研究の中から、視点を変えて発表するということしかできませんでした。ただ今は、ラジオ講座の仕事が終わって少し落ち着き、講演に行く移動時間等に、文献を読む時間や作業をする時間を当てています。また、私の仕事は子供たちがどのように授業で学び、先生がどのように授業をしているかということを見るために学校の現場に足を運ぶことが大事なのですが、そういったこともできるようになりました。そして授業をしていた先生にインタビューをしたり、もっと深く話すということをする時間ができました。それから、雑誌の連載記事を持っていますが、その記事を書くために授業に見学に行って、インタビューをして、それを分析して、記事にするということもできるようになってきました。あとは国から科研費をもらって、英語教員の英語力をどう上げていけばよいかという課題解決のために、先生方とグループを組んで情報を集めたり、授業の具体例をみて考え、その方法を提案するといったこともしています。このように、以前に比べると新しいことに時間を使えるようになっています。まだまだ時間的には苦しいですが、隙間時間を何とか利用して研究をしている、そのような感じです。

もし余裕ができたらしてみたいことはありますか。あるとすればどのようなことですか(研究に関係しなくても可能)。

これは趣味とも関係しているのですが、テニスをやりたいです。私が教員になったのは硬式テニス部の顧問になる、そしてインターハイ出場監督になるためでした。自分が高校生の時にインターハイに行きたかったのですが、行けなかったので、大学に入って毎日テニスをし、アルバイトもテニススクール3か所でコーチをしていました。実際に高校の教員になって3回インターハイに連れていき、また、35歳くらいまで自分自身もトーナメントを回っていました。その為、自分自身が埼玉県ランキングの何位にいるかということを毎回気にしていましたし、本当に朝から晩までテニスばかりしていました。そして34歳の時に英語教育に集中すると決意したのです。決意してから最後に後悔がないように、35歳の時に北海道選手権から各地を転戦し、ランキングのポイントをとり、テニスは辞めて英語教育に注力するようになりました。それまでにテニスに費やしていた時間を全て英語教育に向けるようになったので、今では教科書を作るという大きなことをさせてもらっています。

もともとは英語教員をしながら顧問の先生をしていたということですか?

ふつうは英語の教員になって、テニス部の顧問を持つというものだと思います。ただ私は逆で、硬式テニス部の顧問をするために、(中学はソフトテニスなので)高校の先生になるということ、また埼玉県代表で、公立高校でありながら私立高校を倒してインターハイに出たかったので、埼玉県の公立の教員になるということを決めました。つまり、あくまでメインはテニスでした(笑)私は本当にテニスが好きで、今もテニスをやりたくて仕方がありません。今ならばベテランの年齢別で試合に出場できるので、あわよくば、また試合にでたいなと思っています。時々本屋さんでテニスの雑誌を見るのですが、自分が20代の時に戦った人が、今50代の全日本のランキングに入っていたりするのを知って、私もやりたいなと・・・。ただ、今は英語の教員をしていて本当に良かったなと思っています。あとは研究の方では、本当に役立つような、これを使って学んでいれば絶対に大丈夫というような学習書や文法書を作成するということを、これまでの集大成でしていきたいと考えています。

ご協力ありがとうございました。