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渡邉暁子研究室

まず国際学について、私は「国と国」という概念も大事ですが、それよりも「人と人」や「国と人」の関係を考える民際学を念頭に置いています。私たち一人一人が、地球市民としてどういったことを考えていくべきなのかというときに、国や社会からこぼれ落ちてしまう人、社会の中で推進されていく大きな動きから排除され、等閑視されてしまう人々、いわゆる周辺化された人びとのことも拾い上げていくことが重要であると思います。最近であれば、ISISの問題にあるように国や社会、世界に対して不満を抱いた人々がそれらに対して反旗を翻し、自分たちの望ましい社会を武力でつくり上げようとする動きが見られます。このような問題に対して、いわゆる少数派といわれ見過ごされてきたような人たちのこともしっかりと考え行動していくこと、国の中だけでなく周りの国々と協力しながら考え、社会をつくっていくことが大切であると考えています。だからこそ、私が専門とする学問は、国際学というよりは基本的に地域研究です。グローバルな大きな話をするよりも前に、まずグローバルの中のより小さな地域のことを考えることを重視しています。その上で、その地域を一般の人々の視点から見ること、その中でも一番取り残されている人々の視点から物事を見ていくことを心がけています。このときに有効なのが文化人類学的視点です。私たちには、メディアや世論によってつくられる他者へのイメージが先入観としてあるものです。しかし、実際にその土地の人々と直接関わる経験をすることで、それまで持っていた先入観が覆され、人と人との間に新たな理解が生まれることがあります。このような人と人との付き合いで生まれる理解、人と人とが協働するための土壌を提供することが私の仕事だと考えています。一般の人たちから見る様々な問題への対処の仕方を学び伝えていくこと、他者との関係構築を学び、それを伝えていくことが仕事だと考えています。

先生の研究を一言でいうと何ですか?

「縁の下の力持ち」でしょうか。こういったことは一見役に立ちません。しかし以前、「後にも先にもあなたがしたような研究はない」と言われたことがありました。その人達は、大統領府で働き法案の草稿を書いているような方たちでした。もちろんお世辞かもしれませんが、一見すぐに役に立たないと思われるようなことであっても、国の政策に関わることがある、後に生きることがあると感じた出来事でした。私自身がマイノリティの研究を行いながら、みんなに知って欲しいと思っていたことなので、政策立案者への資料を提供する役割を担うことがある。マイノリティの研究をやっていて良かったと思った出来事でした。また、これは、内部の人間ではなく外部の人間が言うからこそ意味があるとも思っています。それは、利害関係者による自己擁護的視点ではなく客観的・批判的視点を提供することにつながるからです。

比較的無茶を言います。(笑)ただそれは、伸びしろがあるという前提で言っています。「ここまででいいや」という気持ちではなく、「ここまでいってほしい」という期待を込めているからです。

愛のムチですか?

はい。それから、基本的に本人がやりたいことや考えていることに対して否定はしないということを心がけています。なぜそこに至ったか、そういう考えに至ったのか投げかけることを大切にしています。考えている過程を大事にしてほしいと思っているからです。したがって、授業に関して言えば、なるべく一方向にならず、双方向、多方向になるように努めています。また院生に対して、機会をたくさん提供したいと思っています。可能性を広げるお手伝いがしたいからです。

時間はないのですが...日本語の論文なら一日二日に一本は読みたい、週に三本は論文を読みたいと思っています。自分でノルマをつくって頑張っています。授業がないとき(長期休暇)は海外へ行って、自分の中のモードを教育モードから研究モードに切り替えています。現地での経験は、毎回新たな発見があり刺激をもらうので、それを糧に帰国後、時間をつくるようにしています。でも、なかなか時間を作ることが難しいので、もどかしいです。大学の授業期間に入ると、研究の時間がなく、どうしても教育の時間になってしまいます。そうすると、研究のモードが下がってきてしまうので、とにかく研究会を見つけて参加したり、見切り発車でもいいから研究発表を申し込むこともしています。発表に向けて自分を追い込む!自分を追い込まないとやらないんです。研究会や国際会議に参加すると、いろんな人との出会いがあるので、そういった出会いを糧にして頑張っています。また、フィールドが海外なので遠いですが、情報ツールの発達のおかげで現地の人とのコミュニケーションが取れるので、フィールドと近くなれたと感じています。欲しい資料も現地に行くことなく送ってもらうこともできるので、その分時間や労力が省かれている、良い面もあるなぁと感じています。

フィールドを日本に置くということは考えますか?

研究対象を日本にということも考えるけれど、海外の方が未だに分かっていないことがたくさんあり、行けば行くほどたくさんの発見があるし、いろんな人との出会いがあるから楽しい。私は海外の方がワクワクします!研究をしていて、自分でなければできない関係を築いたり、取れないデータであったり...現地の人たちに受け入れてもらって、自分にしかできない研究がしたいと思っています。

余裕ができたらやってみたいことはありますか?

まずは余裕をつくりたいけれど、単著の本を出したいです。これまでやってきたことやお世話になってきた人たちへの恩返しとして英語で本を、エスノグラフィーとして出版したいです。また、新しい仲間と一緒に共著で本を出したいです。構想はあるけれど、資金と時間の問題でなかなか実現できないでいます。趣味的なことでいえば、資料の断捨離をしたいです。...捨てられない性格です。(笑)調査先の方からもらったおみやげを捨てられなかったり、イスラームの研究をしているので、いろんな人からいただいたイスラームに関する小冊子がたくさん眠っていたり...持っているのにまたくれる、同じ物でも何度もくれるんです。調査に関連した人からもらった数々の物が、段ボール一つ、二つ分?くらいあります。その人たちの顔を思い出して捨てられないんです。ただ、現地の人からもらったイスラーム布教のための資料は、テキスト研究に使えるかも...と思っています。余裕ができたらやりたいことです。

テニスをしたりジョギングをしたり、家からちょっと走ると海岸に出るので、湘南の海岸沿いをジョギングしています。今は桜の季節なのでとても綺麗です。また、最近は料理にはまっています。海外にいるときは、ホテル生活になるのでどうしても外食になりがちです。日本に帰ってきたら料理を作りたい!と思って頑張っています。現地で買ってきたスパイスを使った料理なども作ります。お弁当は多国籍です。

ちなみに今日のお弁当は?

揚げ出し豆腐、ニンジンとパクチーのサラダ、菜の花の胡麻和えなどなど...今度作って持ってきますよ。(笑)原稿を書きながら、夜ごはんを食べながら、お弁当用のメニューを作っています。料理はストレス解消です!また、アロマをお風呂に入れたり、東南アジアに行った時にはお香を集めたり、香りのする物を集めるのが好きです。あとは、楽器ができたらいいのに...昔ピアノをやっていたので、余裕ができたらもう一度やってみたいと思っています!

ご協力ありがとうございました。