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2020.05.13
お知らせ

オンライン授業開始を目前にして(学長メッセージ)

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 5月14日(木)からいよいよ今年度の授業が始まります。ここに至るまで、「授業期間の設定をどうするのか?」「授業の形式はどうするのか?」「授業の内容はどうすればいいのか?」「発信の仕方はどうするのか?」「学生の受信環境がどうであり、この発信で受講が可能であるのか?」等々、さまざまな観点に目配りをした上で、授業を始めるための準備を、大学一丸となって、整えてきました。そして授業開始の日をいよいよ迎えるのですが、教員も職員も学生の皆さんも、不安がぬぐえるどころか、もしかすると、さらに不安が高まっているかもしれません。

 私は教育学部の教員として学生の教育実習に長く関わってきた中で毎年のように感じることを、授業開始の日を目前にした今、感じているところです。教育実習はその仕上げとして、研究授業を行います。この授業のために、実習生たちは指導にあたってくださる先生方の指導を受けながら、膨大な時間と手間をかけて準備をします。「準備完了!」となっても、実際授業が始まる直前まで、ドキドキはおさまりません。いよいよ授業が始まります。すると多くの場合に共通することがあります。それは「自分が予想した通りに授業は進まない」ということです。確かに準備は万端(のはず)です。なのに...
 児童・生徒の反応をはじめとして、たくさんの「動くもの」によって構成されている「出来事」は、いくら予想しても十分とは言えないし、想定外のことがたくさん起きるものです。また、授業者の意図するように学習者はすべて反応するとは限らないのです。ちなみに私が実際に経験した最も「恐ろしかった光景」は、開始20分で、予定の内容がすべて終わってしまったときでした。授業者が進めるスピードによってもたらされたことも確かですが、学習者側も何も反応せず、こうしたことが起きてしまったのです。
 こうしたことから、毎年のように実習を終えた学生は皆、「地図は現地ではない」ということに改めて気づいた上で、「授業とは授業者と学習者の協働作業によって成立するんですね」という、ある意味当たり前のことを必ず言います。ここで私が述べたことは「言い訳」に聞こえるかもしれません。しかし私が皆さんにお伝えしたいことは、春学期全体を通じて、文教大学の授業を、学生、教員、職員全員で、作ってほしいというお願いなのです。授業を行っていく過程において、その都度その都度、何か課題が必ず見つかるはずです。それを皆で対話しながら修正し、そしてダイナミックに授業を作っていってほしいというお願いをしたかったのです。

 文教大学の建学の精神は「人間愛の精神」です。今の状況において、この精神をどのような行為として具現化するべきか。本学は、この精神の具現化を、多面的に、そして段階的に具現化していくべきだと考えました。そして、まず、最優先すべきことは、困っている学生の学びを、全員で支えあうという信念の下に、教育の公平性を整えることだと判断したのです。ただし、私は先に、授業をダイナミックに作っていってほしいというお願いをしました。授業を作っていくという過程の中で、今後、何らかの支援の方法を整えていかなければならないと考えています。
 これから、いつ何時どんな出来事が起きるかについての予測は大変困難です。しかし、今回の本学の姿勢から感じていただきたいことがあります。それは今後、何かが起きたとき、文教大学は困っている人を全員で支えあうという姿勢をとった上で、そのときに必要なことを考え、様々な支援を実行していくということです。この姿勢は揺るぎないものであることを理解してください。

 新型コロナウイルス感染症の猛威はいまだ収まっているとはとても言えない状況です。この社会で生きている私たちは、今までとは異なった価値観を持たなければならず、都度都度変化する事態への対応を取らなければならなくなっています。いつ、元の状態に戻るんだろう?こうした期待を抱くことが、逆に不安感を高めてしまうような毎日です。そのような不安を抱えながらも、私たちは、しばらく生きていかなければなりません。
 今回のコロナ禍はそのうち終息を迎えることでしょうが、このような状況が「終息する」とは言い切れません。今後、未知の様々なウイルスの蔓延、さらに大きな「災害」など、人類にとって「都合のいい世界のあり様」とは言えない中で生きていかなければならないことを突き付けられたと言っても過言ではありません。しばしば「共生」ということが言われますが、私たちが共生するのは、人類に限定されない、様々なモノ、コトとの共生なのです。こうした共生社会の中で、私たちはこれからを生きていかなければならないのです。このとき、「人間愛の精神」は最も根底を支える精神です。この精神に基づいて、私たちは何を思い、何を考え、どのように振る舞うのか?大学における授業を通して様々な学びを行ってほしいことは当然ですが、今のこの状況を、学びのきっかけを与えられたと捉え、「これからの社会を生きる」ということを、ぜひ具体的に学んでください。よろしくお願いします。

文教大学 学長 近藤研至

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